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系統用蓄電池制度変更後の収益再設計と需給運用の実務〜9月・10月の市場変更、48コマ配分、需給管理から読み解く投資回収戦略〜

10月16日(金)
株式会社AnPrenergy 代表取締役
一般社団法人日本再生可能エネルギー地域資源開発機構 理事
村谷 敬(むらたに たかし) 氏
2026年9月1日、一次調整力・二次調整力①・複合商品の上限価格が15円から10円へ引き下げられます。そして、10月1日には北海道・東北・東京の3エリアで一次調整力の募集量が約3割減少します。こうなると上限価格が7.21円まで引き下げられるのは時間の問題とも言えます。「一次調整力一本足」で投資判断した事業者のシミュレーションは、ここで確実に狂うことは間違いありません。
本講演では、制度変更前後の想定収益差を数字で示したうえで、2026年度以降の、48コマ配分表を提示します。新規参入向けの「稼ぐ話」ではなく、既に投資した設備で投資回収を成立させる「守りの運用設計」を、そして、守りから攻めに転じることができる方策について、長年の系統用蓄電池ビジネスに関わってきた実務目線から解説します。
1.現場の3つの問いから始める
(1)「シミュレーションは狂うのか」「いくら変わるのか」「止められるのか」
(2)「なぜこんな制度にしたのか」への回答:需給調整市場は投資回収を保証する市場ではなく、
送配電の調達コスト(=託送料金)を最小化する調達市場。募集量は行政変数、価格だけが市場変数。
2024年度の高値は応札不足のレントであり、不足が解消すれば消える設計だった
(3)投資側と制度側の前提のズレ:実態調査で「蓄電池は需給調整市場のみで活用」が筆頭に挙がった事実
2.9月1日、10月1日、その次 -3段で来る制度変化
(1)9月1日上限10円:根拠は上限付近の高値約定が量3.4%・費用16.8%を占め、その札の多くが蓄電池だったこと。
「蓄電池は価格を下げても市場に残る」という制度側の認識
(2)10月1日一次必要量の見直し:東3社で約1,030MW→約710MW。中西エリアは今回対象外
(3)供給側も増える:既設の調定率緩和、既設蓄電池の一次オフライン枠参入(経過措置)
(4)周辺:複合市場の募集量1σ化、補正インバランスC300円/D50円、EPRX手数料倍増、PCS周波数計測要件、次の7.21円
3.数字で見る「狂い方」
(1)モデル機:1,990kW/8,000kWh、40コマ応札、350日運用
(2)旧シミュレーション(一次6円×約定80%=年1.34億円)と、上限10円・募集量減後の感応度表(3円×50%で4,180万円まで)
(3)エリア別3列:東京/東北・北海道/中西で何が違うか
(一次需要減、三次②募集量削減係数、揚水随意契約、JEPXスプレッド、出力制御)
(4)2025年度の電源種別実績:蓄電池の一次8.8〜13.5円、三次②7〜9月40〜58円、VPP/DR70〜94円が示すこと
4.食い止める道筋 -3市場+ネガポジ型の配分
(1)供出可能量の式を1枚で:発電上限-発電計画+需要計画。充電計画を出すだけで売り物が3,980kWに倍増する理由と、
揚水動力等の出力抑制としての精算(V1×需要計画-需要実績)
(2)1日48コマの基本形:深夜充電9コマ(停止余力を複合へ)、日中待機23コマ(一次20コマ上限+複合)、
夕方放電9コマ(JEPX)、夜待機7コマ
(3)三次②の尾の取り方:9割が2円以下、0.3%が費用の2割という分布。
募集量11:30公開→14:00応札→15:00約定→17:00時間前という順序が生む「不落コストゼロ」。切替条件と連続4コマ上限
(4)JEPX裁定を毎日1サイクル固定して床にする。季節・休日・エリアの切替(冬1.5サイクル、九州の昼充電、余力活用の下げ余力)
(5)容量市場と余力活用契約の正しい位置づけ
(6)着地の数字:分散+ネガポジ型で8,400万〜1.1億円、容量市場込みで旧シミュレーション水準に近づく道筋。回収年数の再計算
5.守りの運用と制度リスク
(1)ペナルティは約定単価に比例。月3回で新規取引停止、解除は自費の実働試験。2回目で止める運用ルール
(2)SOCとインバランス:朝の充電停止指令→ゲートクローズ前に夕方の発電計画を修正→時間前で買い戻す、
という需給管理の基本動作
(3)V1・V2の設計(充電価格+機会費用、根拠資料)、毎週火曜14時の登録
(4)需給調整市場ガイドラインの固定費回収額:他市場収益を控除した額が上限。マルチユースで稼ぐほど高値応札の根拠が薄くなる
(5)委託先に求めるKPI(商品別落札率・不適合回数・SOC計画精度・円/kW年)と、
レンダー向け前提の差し替え(10円基本・7.21円ストレス)
6.まとめ -10/1までに変える2つ、年内に整える3つ
(1)追加投資ゼロで明日からできる:需要計画の出し方を変えてネガポジ型で応札する/三次②を条件付きで応札する
(2)年内に整える:委託契約のKPI化、V1根拠資料、レンダー説明資料
(3)中期の選択肢:二次①への専用線投資、容量市場応札、中西エリアへの配分見直し
7.質疑応答/名刺交換
※セミナー参加特典として「運用チェックリスト」を進呈


電力ビジネスが黎明期だった2009年から新電力支援サービスを手がけるエナリスやエプコで電源調達や需給管理を担当し、電力全面自由化を迎えた2016年に独立。電力市場の価格形成に関する専門的な見地から、電力ビジネス全般のコンサルティングを手がけ新電力100社以上を支援。現在では、大手電機メーカー、金融機関、自治体などを対象とした、エネルギーコストの削減や脱炭素化、再生可能エネルギーの導入などもサポートする。主な著書に「エネルギーの未来 2020-2029」(日経BP)がある。系統用蓄電池ビジネスは2021年度より現在まで、国内で50社以上の開発支援、20社以上のアグリゲーター業務内製化、5社の補助事業採択の実績がある。
