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新規LNGプロジェクトの最新動向と今後の事業戦略

5月28日(木)
和光大学 経済経営学部 教授/
石油技術協会 資源経済委員会 委員長
岩間 剛一(いわま こういち) 氏
米国、イスラエルによるイランへの軍事攻撃により、カタールの年間7,700万トンのLNG輸出プロジェクトは、フォース・マジュール(不可抗力)宣言を出し、国際LNG市場は需給逼迫に直面している。しかし、長期的には、炭酸ガス排出削減の切り札として、LNG需要は増加が見込まれている。ロシア産天然ガスの禁輸、トランプ政権の新規LNGプロジェクトの凍結解除等により、世界の新規LNGプロジェクトは活況を呈している。2030年に向けて、世界のLNG需要は増加し、それに応えるために米国における新規LNGプロジェクトの開発、既存LNGプロジェクトの拡張が、相次いで行われている。米国のシェール・ガスを原料としたLNGプロジェクトに加えて、アラスカ北極圏の天然ガスによるLNGについては、日本の東京ガス、JERAも関心表明を行っている。カタールの拡張工事も行われ、三井物産が参画するモザンビークLNGも建設工事を再開する。従来から、脱炭素の流れにおいて、炭酸ガスの排出量が石炭の半分程度と優れた環境特性をもつ天然ガスは、トランジション・エネルギー(橋渡しのエネルギー)としての需要が期待されている。石油メジャーのシェルによる予測では、世界のLNG需要は現在の年間4億トンから2040年に年間7億トンに増加すると見込まれており、強気の見通しでは2040年に年間8億トンを超える。2025年には、LNG調達先の多様化を求めて、三菱商事、三井物産等は、インドネシア、UAE(アラブ首長国連邦)、カナダ、マレーシアの新規LNG開発を表明している。LNGカナダは、LNGの出荷を開始している。
有力LNG輸出国カタールは、2024年2月26日に、従来の世界最大の天然ガス田ノース・フィールドの東部、南部に加えて、西部のLNGプロジェクトの開発構想を発表した。カタールは、LNG生産能力を現在の7,700万トンから2030年に1億4,200万トンに増強し、世界最大のLNG輸出国奪回を目指している。トランプ政権は、米国のシェール・ガスを原料としたLNGプロジェクトの輸出を米国の貿易収支改善の切り札として、各国にLNG購入を呼びかけている。それと同時に、石油メジャーは、天然ガスの液化プロセスを、従来のガスタービンから太陽光発電による電動化により炭酸ガスの排出を削減し、CCS(炭酸ガス回収・地下貯留技術)と組み合わせ、よりカーボンニュートラルなLNGの生産によって、炭酸ガス排出削減を求める新たな需要家を開拓しようとしている。米国は、シェール・ガスを原料としたLNGの輸出量が、2024年に8,540万トン、2025年に年間1億トンに達し、豪州、カタールを抜いて世界最大となり、ロシア産天然ガス脱却を目指す欧州諸国の重要なLNG供給源となっている。EU(欧州連合)は、2027年末にロシア産天然ガスの輸入を取りやめる方針にある。新型コロナウイルスの感染拡大により2020年4月に百万Btu(ブリティッシュ熱量単位)当たり1.825ドルに暴落した極東アジアLNGスポット価格は、ウクライナ危機を受けて2022年3月には百万Btu当たり84.8ドルと史上最高値をつけ、2025年11月中旬時点においても百万Btu当たり11ドル台と高値をつけている。欧州諸国の天然ガス指標価格オランダTTFも、2022年8月には百万Btu当たり94ドルを超えた。その後、欧米諸国の冬が温暖であり、暖房需要が減少したことから、2025年11月には、百万Btu当たり11ドルに低下している。しかし、長期的なLNG需要の増加、LNGスポット価格の上昇を受けて、米国をはじめとして、新規のLNGプロジェクトが相次いで着工への動きを始め、中国、欧州諸国が、米国、カタール等とLNG購入の長期契約を締結している。
カタールも意欲的なLNG生産能力増強計画を打ち出し、日本の千代田化工連合は年間生産能力3,200万トンの液化プラントを130億ドル(約1兆7,550億円)で受注している。2025年8月には日揮が、LNGカナダの拡張工事の基本設計(FEED)を受注した。LNGは、脱炭素へのデスティネーション・エネルギー(最終目的のエネルギー)としての評価が定まり、IEAの2025年11月の見通しにおいては、2050年まで世界の天然ガス需要は増加を続ける。中国は、炭酸ガスの排出削減、大気汚染防止策から、LNG輸入を増加させて、世界最大のLNG輸入国に返り咲いた。2026年の冬に向けて、欧州諸国、米国の暖房需要の増加、アジア諸国のLNG火力発電への動き、電力需給逼迫等により、極東アジアLNGスポット価格は、再び上昇する可能性が考えられる。
LNGは、豪州、米国をはじめとした相次ぐ新規LNGプロジェクトの稼働開始により、数年前には余剰であると見られていたものの、欧州諸国におけるロシア産天然ガス輸入量(LNG換算年間1億1,400万トン)相当のLNG特需の発生、中国をはじめとしたアジア諸国の経済成長にともなうLNG需要の増加により、2030年頃までLNG需給逼迫が続くという見方に大きく変貌している。ロシアのサハリン2プロジェクト、アークティク2LNGプロジェクト等から欧米の石油メジャー(国際石油資本)が撤退し、サハリン2をはじめとしてロシアのLNGプロジェクトへのリスクが強まるなか、米国、カタール、UAE、モザンビーグ、カナダ、インドネシアをはじめとした新規LNGプロジェクトの今後の動向はどうなるのか。LNG価格の2026年における見通しと、脱炭素への新規LNGプロジェクトに関連する日本企業の事業機会について分かりやすく説明する。
1.ウクライナ危機の長期化と欧州の脱ロシア産天然ガス-欧米の天然ガス在庫
2.LNGスポット価格の要因と今後-2025年の寒波来襲と2026年の気温
3.長期的な天然ガス需要、LNG需要の見通し-世界は再び天然ガスに
4.欧州諸国と中国のLNG需要の見通し-欧州諸国による脱炭素戦略
5.アジア諸国におけるLNG需要の見通しと日本のLNG経済圏
6.米国の新規LNGプロジェクトの最新動向-トランプ政権とLNG輸出増強
7.米国のLNGプロジェクトへの日本による経済支援策-アラスカLNG
8.米国に抜かれた豪州LNGプロジェクトの今後の見通し-LNG自国優先
9.カタールのLNG生産能力拡張計画の見通し-カタール事業のチャンス
10.UAEにおける新規LNGプロジェクトと炭酸ガス排出削減プロセス
11.ロシアのLNGプロジェクトのリスクと今後の見通し-アークティック2
12.モザンビークLNGの今後の見通し-不可抗力宣言の解除
13.日本企業によるアセアン諸国へのLNG火力発電プロジェクトの見通し
14.日本企業による米国の天然ガス火力発電ビジネス-AIによる電力需要
15.カーボンニュートラルとLNGの現状と今後の見通し-CCSと電動化
16.LNG燃料船、LNGトラック等による炭酸ガス排出削減
17.2026年におけるLNG需給とLNG価格の見通し-2026年冬のLNG価格
18.資機材価格と人件費の高騰に直面するLNGプロジェクトへの経営戦略
19.新規LNGプロジェクトを取り巻く日本企業のとるべき事業戦略
20.質疑応答/名刺交換

1981年 東京大学法学部卒業。東京銀行(現三菱UFJ銀行)入行。東京銀行本店営業第2部部長代理(資源エネルギー融資、経済産業省担当)。東京三菱銀行本店産業調査部部長代理(資源エネルギー調査担当)。出向:石油公団企画調査部:現在はエネルギー・金属鉱物資源機構(資源エネルギー・チーフ・エコノミスト)。出向:日本格付研究所(チーフ・アナリスト:ソブリン、資源エネルギー担当)
2003年から和光大学経済経営学部教授。
著書:「資源開発プロジェクトの経済工学と環境問題」、「ガソリン本当の値段」、「石油がわかれば世界が読める」、その他、新聞、雑誌等への寄稿、テレビ、ラジオ出演多数。
