■会場受講 ■ライブ配信 ■アーカイブ配信(2週間、何度でもご視聴可)
【IBC2022緊急レポート】
〜放送電波をインターネット網として位置付ける欧州規格
DVB-NIPがイメージするノンリニアな映像コンテンツ〜
10月18日(火) 終了済
デジタルメディアコンサルタント
(同)江口靖二事務所 代表
(一社)デジタルサイネージコンソーシアム 常務理事
江口 靖二(えぐち やすじ) 氏
3年ぶりにリアル開催された欧州最大の放送関連イベントであるIBC2022は、残念なことに日本からの参加者が極めて少なかったが、日本の放送業界と映像業界ではベンチマーク必須の内容であったのだ。これまでの放送と映像の進化は決してイノベーションではなく単なる高画質化の歴史であったが、この先に起きることはそうではないことがはっきりと見えたからである。
放送とデジタルメディアの実務とコンサルティングに従事しながら、十数年に亘って年初のCESからNAB、IBC、そしてInterBEEを定点観測してきた筆者が、2030年まで起きる映像コンテンツの大変革について、次世代の放送にだけに限定することなく紹介する。
1.IBC2022のキーワードはノンリニア、ナラティブ、そしてサスティナブル
従来までのリニアなTVコンテンツと対比する概念として、新たにノンリニアな映像コンテンツが加わる。これはバーチャルプロダクション、ボリュメトリックキャプチャー、メタバースなどの技術を背景として実現されていく。今後は放送においても、ゲームのような完パケではない、視聴者が主体的に紡いでいくようなナラティブなコンテンツが出現する。
また、日本ではほとんど議論にもなっていない、放送領域でのサスティナブルへの取り組みが欧州では支配的かつ社会的要請であることもレポートする。
2.欧州の次世代放送規格DVB-NIP
日本の次世代放送は、未だ検討のための要点が抽出されたレベルであるのに対して、欧州ではDVBーNIPとして規格策定がほぼ完了し、すでに実証フェーズに入った。その特徴は、日本のような放送と通信を最初から分けて考えた上での放送通信融合議論とは全く異なり、放送電波もインターネット網の一つであると位置づけた上で、電波も含めて一体化されたインターネットで次世代放送サービスを実現するという考え方である。またXMLベースで構成されるのでX-VRMLなどとの親和性が高く、VRやメタバースへの対応が容易になるように設計されている。米韓の規格であるATSC3.0とも比較しながら、日本の次世代放送のためにベンチマークすべきポイントを指摘する。
3.欧州DVBが目指す放送のOBM化とメタバースへの道筋
Object-based media(OBM)は、コンテンツを単一のアセット、完パケとして配信するのではなく個々のオブジェクトとして提供する。こうしたオブジェクトをこれまでは制作者が撮影、編集、MAで完パケとして組み立ててきたわけだが、これからはゲームのように端末側で、かつ視聴者の意思によって自由に構築することができるようになる。これによってゲームの世界=メタバースと放送がマージしていく過程をイメージしてみたい。
4.ライブプロダクションとリモートワークフローの主流となるNDI 5
放送におけるE2EのIP化の先頭部分がカメラである。各社から続々と登場してきたNDI5対応のカメラがもたらす、ライブプロダクションとリモートプロダクションのイノベーションのインパクトを紹介する。
5.質疑応答/名刺交換
87年慶大卒、同新聞研究所(現メディア・コミュニケーション研究所)修了。(株)日本ケーブルテレビジョン(JCTV)で地上波、BS、CS、ケーブルテレビの業務全般を幅広く従事、AOLジャパン(株)でインターネットと映像ブロードバンド配信の黎明期を経験、(株)プラットイーズを設立し放送通信領域のコンサルティングに従事、08年よりデジタルメディアコンサルタントとして独立し(同)江口靖二事務所を設立。