■ポイント■
・最新テクノロジーやセンサの開発が進み、著しい発展を遂げているフードテック!
・これまで感じ方に個人差があり伝達が難しかった「おいしさ」や「味」をデータ化、可視化することで、新たなマーケティングツールとして
活用できる!
・最新の事例を食品メーカーやフードテックの専門家50名超が詳述した、食品関連業種の方必読の1冊!
■概要■
フードテック(FoodTech)は、フード(食)とテクノロジー(技術)を合わせて創った造語である。単に食にまつわる技術にとどまらず、近年のSDGsをはじめとする社会や経済の課題とも連携した総合的な科学技術と位置づけられる。この超高齢社会、そして多様化の増大した社会では、これまでの一般大衆を対象としたマスマーケティングから、個人の嗜好や健康を反映した食のパーソナライズ化が要求される。つまり、健康増進と食事満足度を両立させたテーラーメイド食の研究開発が必須となる。(中略)
本書は「おいしさの基礎」「応用分析」「おいしさの見える化」の3つの異なるステージから構成されている。目次を眺めると、おいしさとコク、アロステリー、味覚センサ、匂いセンサ、人工嗅覚システム、嗅覚ディスプレイ、分子認識、苦味受容体、食データベース、食感測定、プレゼンにつながる、フードイノベーション、薬膳、フードNFT、地域価値共創、個人嗜好といった、基礎から応用まで如何にも新潮流を感じさせる言葉が並ぶ。扱う対象は医薬品から野菜、お茶、鶏卵、魚醤油、コーヒー、酒と魚料理、信州そば、健康モデル食、減塩食品、大豆と極めて多岐に渡る。食品ロスを削減し、国境を超え、世代を越え、一生涯、1人1人が食の喜びと健康を享受できる未来の構築を目指す、その試みに読者は感銘を受けるであろう。
【第Ⅰ編 おいしさの基礎】
<1>おいしさとコクの科学
1.はじめに
2.おいしさの成り立ち
3.おいしさの客観的評価法
4.おいしくする物質
5.うま味調味料でなぜおいしくなるのか?
6.おわりに
<2>嗅覚の分子メカニズム
1.ヒトの鼻腔と嗅覚器の構造
2.嗅覚受容体遺伝子と多型
3.嗅覚受容体の情報伝達メカニズム
4.匂い物質と受容体の組み合わせ
5.自然な「匂い」と嗅覚受容体応答
6.匂いと嗅粘膜液
<3>旨味・甘味感覚と食性
1.口腔内における味受容
2.旨味・甘味受容体遺伝子の進化
3.味覚受容体における遺伝子多型
<4>味覚受容体に見るアロステリー
1.背景
2.分子動力学シミュレーションと甘味受容体機能解析系
3.甘味受容体のアロステリーを介した活性化・不活性化機構
<5>ゲル状食品のテクスチャーの科学
1.テクスチャーの定義
2.テクスチャーに関する生理機能
3.ゲル構造とテクスチャーの認識
【第Ⅱ編 応用分析】
<1>味覚センサの新展開
1.はじめに
2.新機種TS-6000Aの登場
3.アロステリーを利用した非荷電苦味物質の検知
4.個人嗜好の可視化
5.五感情報の電送
<2>匂いセンサ研究の現状
1.はじめに
2.E-Noseシステムとその応用
<3>人工嗅覚システムの開発
1.人工嗅覚システム
2.16CH人工嗅覚システムによるニオイの分類
3.16CH人工嗅覚システムを用いたヨーグルトの美味しさ評価
<4>ヒト嗅覚受容体センサーによる匂い情報のデジタルデータ化(嗅覚情報DX の実現)
1.はじめに
2.ヒト嗅覚システムを模倣したセンサー
3.嗅覚情報DX実現に向けたヒト嗅覚受容体センサーの課題
4.ヒト嗅覚受容体センサーによる実用化例(1):塩味増強デジタルフレーバーと甘味増強デジタルフレーバーの開発
5.ヒト嗅覚受容体センサーによる実用化例(2):アンタゴニスト消臭剤、モジュレーター消臭剤、マスキング剤
6.ヒト嗅覚受容体センサーによる実用化例(3):無臭判定へ
7.ヒト嗅覚受容体センサーの活用例(1):医学的根拠に基づくアロマ精油の創製
8.ヒト嗅覚受容体センサーの活用例(2):診断領域への展開
9.嗅覚情報DXの実現に向けて
10.おわりに
<5>嗅覚ディスプレイの開発
1.はじめに
2.嗅覚ディスプレイ
3.嗅覚ディスプレイを用いたフレーバーコンテンツ
4.嗅覚ディスプレイを用いた情報通信コンテンツ
5.まとめ
<6>無機・有機ナノ材料を用いた分子認識デバイスの開発
<7>MSS嗅覚センサの研究開発とフードテックへの応用可能性
1.はじめに
2.MSSについて
3.感応膜について
4.機械学習との融合とフードテックへの応用
5.おわりに
<8>昆虫を利用した匂いセンシング技術の開発
1.はじめに
2.アフリカツメガエル卵母細胞を用いた「匂いセンサ」
3.昆虫由来の培養細胞を用いた「センサ細胞」
4.遺伝子組換えカイコガを用いた「センサ昆虫」
5.おわりに
<9>おいしさのカギ、複合臭はどうアプローチすべきか?
1.複合臭は、おいしさのカギとなるのか?
2.複合臭は、どのように調べていくのがよいのか?
3.まとめ
<10>腸内細菌叢分析を実現するマイクロ腸モデルの開発
1.はじめに
2.腸内細菌とは
3.腸内細菌叢の形成要因(先住効果)と従来の分析法の課題
4.Organ-on-a-chip、マイクロ腸モデルの開発
5.腸内細菌叢を再現するマイクロ腸モデル
6.終わりに
<11>味データベースの基礎
1.はじめに
2.味データベースの構築
3.味データベースの活用事例
4.商品企画・開発の現場の悩みを解決するDXツール〜FOODATA〜
5.味データベースの将来展望
<12>味覚センサを用いた医薬品の苦味評価
1.各種薬剤の苦味評価
2.口腔内崩壊錠の苦味評価(ファモチジン、ベシケアの例)
3.飲食物が小児に汎用される経口製剤の苦味強度に及ぼす影響(抗てんかん薬トピラマート、マクロライド系 薬剤、ジフェンヒドラミン等)
4.核酸系化合物による塩基性薬物の苦味抑制効果
5.味覚センサ苦味膜応答とヒト苦味受容体応答の相関性評価
<13>ヒト苦味受容体を用いたセンサーの現状と課題
1.はじめに
2.ヒト苦味受容体の多様性
3.ヒト苦味受容体の遺伝子多型
4.遺伝子過剰発現細胞によるヒト苦味受容体の特性解析
5.ハイブリットセンサーの開発
6.株化細胞を用いた解析
7.苦味感受性の個人差
8.ヒト苦味受容体を用いたセンサーの課題
<14>人の感じ方を測定する摩擦、触覚、食感測定技術開発
1.摩擦評価の現状
2.触覚とは
3.触覚評価の現状
4.触覚評価と食感評価の共通性
5.新しいアプローチ
6.噛み心地評価測定機TL302PAT.
<15>クリープメータによるおいしさの見える化測定
1.食品物性の機器測定
2.おいしさの食感評価測定例
3.サクサク感の見える化
4.介護食の見える化
5.一定応力制御での変形-回復測定のクリープ粘弾性解析を使った、膨張・収縮などの見える化
6.まとめ
【第Ⅲ編 おいしさの見える化】
<1>「味の見える化」によるビジネス活用のニーズの変化と今後の展望
1.はじめに
2.味覚センサの概要
3.味覚センサのニーズの変化
4.今後の展望
・食品ロスへの貢献
・飲みやすい小児薬への貢献(味覚センサの国際標準化)
5.まとめ
<2>画像解析による野菜等のおいしさの見える化の開発と運用
1.はじめに
2.開発の目的と経緯
3.実用化に向けて
4.本開発に用いた目的変数
5.可視光(RGB)による画像解析
6.本開発に用いた要素技術
7.本技術の運用事例
8.まとめ
<3>お茶のおいしさ最前線とペアリング
1.はじめに
2.ティーペアリングの歴史と科学
3.お茶とお酒をペアリングする
<4>鶏卵調理のおいしさの可視化
1.鶏卵のおいしさ
2.ゆで卵のおいしさ
3.目玉焼きのおいしさ
4.プリンのおいしさ
<5>発酵スターターを用いた魚醤油製品の呈味の可視化技術
1.はじめに
2.発酵スターターについて
3.非麹添加型魚醤油の減塩化と呈味の変動
4.麹添加型魚醤油製品の発酵スターター株の違いによる呈味の違い
5.おわりに
<6>プレゼンにつながる「おいしさ」と「だし感」の評価
1.はじめに
2.おいしさと熟成
3.おいしさと雑味
4.だし感と減塩
5.コク味とコスト
6.おわりに
<7>科学的データからコーヒーのおいしさを知る
1.はじめに
2.おいしいい風味は生豆の品質から生まれる
3.コーヒーのおいしさを評価する指標
4.まとめ
<8>食品による服薬Tips
1.口腔内での苦味の経時変化を数値化
2.いろいろな食物との飲み合わせで苦味を抑制
<9>長崎県産酒と魚料理の味覚分析およびペアリング判定
1.はじめに
2.本プロジェクトの背景と目的
3.長崎県産酒類と魚料理のおいしさの見える化
4.長崎県産酒類の特徴と味覚データのビジネス活用
5.味覚分析がもたらすローカルビジネスの今後の展望
6.おわりに
<10>信州そばの海外展開
1.はじめに
2.そばについて
3.「NAGANO SOBA」の開発
4.「NAGANO SOBA」の評価
5.風味評価
6.おわりに
<11>おいしさ評価の活用例とグローバル展開
1.はじめに
2.味覚データなどを活用した味わいの見える化
3.味覚データを活用した海外展開例
4.味データからの味の再現
5.食の未来
<12>論文から見える中国における味覚センサの活用のひろがり
1.はじめに
2.準備
3.結果
4.まとめ
<13>味分析データを活用した商品の特徴の見える化
1.商品開発及び販売促進における味分析データの活用について
2.品質管理における味分析データの活用について
3.今後の展開
<14>日本発のフードイノベーションを目指して-健康モデル食として日本型薬膳を提唱-
1.はじめに
2.健康モデル食日本型薬膳の提唱
3.中医学を基本とした薬膳
4.おわりに
<15>現代栄養学と薬膳における個別化栄養学
1.現代栄養学における個別化栄養学
2.薬膳における個別化栄養学
3.薬膳と現代栄養学における個別化栄養学アプローチの違い
<16>減塩食品のおいしさ可視化研究
1.はじめに
2.味表現モデルと食塩の味
3.酵母エキスの減塩時に物足りなさを補う効果と塩味エンハンス効果
4.塩味様呈味増強素材と新「塩味センサ膜」
5.おわりに
<17>第4の主食、大豆の可能性.〜豆乳は未来〜
1.日本を取り巻く食糧事情
2.大豆は第4の主食
3.豆乳の国内市場と世界のニーズ
4.国民健康飲料への道
5.豆乳は未来だ
<18>「FOOD」×「NFT」:フードNFT市場の創出
1.フードNFTの概要
2.フードNFTの詳細と方向性
3.フードNFTの価値の最大化と持続性
<19>食を起点とした地域価値共創のためのデータ収集・分析システム
1.はじめに
2.おいしさのシステムデザイン
3.データ収集と分析技術の動向
4.食を起点とした地域価値共創
5.GAstroEduプロジェクト事例紹介
6.食のおいしさとFood Transformation(FX)
7.おわりに
<20>消費者の好みから提案する毎日の食事
1.マイデリ レストランアプリ:好みにあったレストラン提案
2.マイデリ レシピサービス:食材タップで簡単レシピ検索
3.マイデリ チラシアプリ:誰でも簡単チラシ掲載&マップで好みのチラシ簡単確認
4.AIを使った新たなサービス紹介(実証テスト中。2024年サービス開始予定)
5.ユーザーの健康的で満足度の高い生活を実現するためのサービス提供
6.SDGsへの貢献
7.技術革新と展望
8.新たな食の未来
<21>個人嗜好の可視化が拓く新世界
1.味の嗜好性診断技術
2.嗜好性データの活用例
3.嗜好性診断で実現する食の未来像
■監修■
都甲 潔
中村学園大学;九州大学
小柳 道啓
(株)味香り戦略研究所;九州大学