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再評価される石炭火力発電の世界の最新動向〜日本企業にとってのビジネス・チャンス〜

9月24日(木)
和光大学 経済経営学部 教授/
石油技術協会 資源経済委員会 委員長
岩間 剛一(いわま こういち) 氏
米国とイランの戦闘に起因するホルムズ海峡封鎖により、原油価格が高騰し、改めて石油の地政学リスクが意識される状況において、単位熱量当たりの価格が割安で、地政学リスクも小さい石炭火力発電が再評価されている。これまで非効率な石炭火力発電のフェード・アウトを計画していた日本も、2026年度においては、石炭火力発電の稼働率の制限を解除した。ホルムズ海峡封鎖による需給逼迫により割高となったLNG(液化天然ガス)に対し、中国、インドをはじめとしたアジア諸国は石炭火力発電への依存を強めている。おりから、エルニーニョ現象による猛暑、干ばつが予想されるなか、アジア諸国にとって、石炭火力発電の重要性はますます強まっている。
中東産原油と石油製品に依存する、インド、ベトナム、フィリピンをはじめとしたアジア諸国は、石炭火力発電の再評価を行っている。三菱商事は2026年4月にベトナムにおいて石炭火力発電所の稼働を開始した。石炭は、豪州、インドネシアをはじめとした地政学リスクの低い国から輸入され、LNGと異なり、原油価格との連動性が低く、低位で安定している。原油価格の高騰とともに、LNG価格も上昇しているため、一人当たりの国民所得が低いバングラデシュ等は、石炭火力発電の強化を図っている。その他、日本をはじめとして韓国、タイ、米国等も、停止を予定した石炭火力発電の稼働停止の先送り、石炭火力発電所稼働率の引き上げ等を行い、経済産業省の有識者会合においても、石炭火力発電は不可欠という意見が多くなっている。
AI(人工知能)の技術革新、データ・センターの新設により電力需要の増加が見込まれ、世界のデータ・センターの電力需要は2030年に2024年比3倍になると、IEA(国際エネルギー機関)は予測している。アジア、アフリカをはじめとした途上国も、人口増加とエアコンの普及により電力需要が増加する。こうした電力需要の増加には、太陽光発電、風力発電をはじめとした再生可能エネルギーだけでは力不足であり、出力が安定し、発電コストが安価な石炭火力発電の維持と増強が必須となる。世界の石炭火力発電を取り巻く現実をみると、2024年における世界の石炭消費量は87億9,000万トンと過去最高を更新し、中国の石炭消費量は前年比1.4%増、インドの石炭消費量は前年比3.7%増と大幅に増加している。2025年の石炭消費量も88億4,500万トンとさらに増加している。欧米先進国の石炭火力発電については、減少が続いているものの、それを上回るペースで、電力需要の伸びが著しいアジア諸国の石炭火力発電の増加が続いている。こうした動きに拍車をかけるように、トランプ大統領は、石炭火力発電への規制を見直し、重要な電源に位置づけている。
今後も、猛暑、干ばつ等による水不足のために、水力発電の発電量が低下し、石炭火力発電が電力不足を補う構図が続く。粗鋼生産用の原料炭価格も、インドの粗鋼生産が増加しており、中国が石炭の国内生産を拡大しているものの、堅調に動いている。中国は、脱炭素政策をとりつつも、石炭火力発電の新設を行っており、今後も石炭火力発電は増加する。インドネシアをはじめとしたアジア諸国も、石炭火力発電は重要な電源となっている。2023年に開催されたCOP28(第28回国連気候変動枠組み条約締約国会議)においては、温室効果ガス排出削減対策をとっていない石炭火力発電の段階的な削減(Phase Down)を明記したものの、廃止(Phase Out)という表現にまでは踏み込んでいない。2025年のCOP30も、化石燃料廃止のロード・マップの制定は、現実論として先送りされた。世界の電力需要29兆キロワット時における36%を石炭火力発電が支えている現実があり、石炭は、ホルムズ海峡危機をふまえ2026年夏以降もさらに重要なエネルギーとなっている。寡占化する石炭プレーヤーと堅調な石炭需要によって、石炭価格は上昇することが見込まれているとしても、石油、天然ガスと比較して圧倒的に割安であり、2026年夏が猛暑となった場合には、一般炭価格は1トン当たり200ドルを超える可能性も考えられる。脱炭素政策とエネルギーの安定供給とエネルギー・コストの低下の同時達成を実現する観点のもと、2026年夏以降の石炭価格はどうなるのか。日本のUSC(超超臨界圧石炭火力発電)、IGCC(石炭ガス化複合発電)をはじめとした高効率な石炭火力発電と、石炭火力発電へのアンモニアの混焼による炭酸ガス排出削減の可能性。長期的なアジアにおける石炭火力発電、トランプ政権の石炭産業重視等、石炭火力発電事業に係わる日本企業にとってのビジネス・チャンスについて、分かりやすく詳説する。
1.ホルムズ海峡危機と石炭火力発電回帰への動き-インド、中国の石炭火力発電
2.トランプ政権の石炭重視の動きにより、今後も増加を続ける世界の石炭消費量
3.LNGスポット価格上昇と石炭火力発電増加の現状と今後のコスト競争力
4.欧州諸国をはじめとした脱ロシア産天然ガスの動きと石炭火力発電
5.日本における電力の安定供給、LNG価格の上昇と石炭火力発電稼働引き上げ
6.中国、インドの石炭需要動向と価格動向-豪州の一般炭の輸入増加
7.インドネシア、ベトナムをはじめとしたアジア諸国の石炭火力発電動向
8.日本の第7次エネルギー基本計画における火力発電の今後
9.石炭火力発電廃止見直しへの動きと石油危機-石炭企業の好決算
10.超超臨界圧石炭火力発電、石炭ガス化複合発電の見通し-アジアへの戦略
11.低品位炭利用技術の最新動向と今後の可能性-アンモニアと水素社会
12.世界における原料炭需要の現状と今後の動向-中国、インドの粗鋼生産
13.一般炭価格、石炭需要の今後の見通し-2027年以降も増加する石炭需要
14.2030年以降の世界における石炭火力発電市場規模-途上国とメンテナンス
15.石炭資源利用と地球温暖化防止への石炭液化技術とCCSの最新動向
16.日本の石炭火力発電技術とコスト競争力-アンモニア混焼のチャンス
17.新興国、途上国の石炭火力発電の今後-地政学リスクがない低コスト発電
18.アジア、アフリカの石炭火力発電の今後と日本企業のとるべき事業戦略
19.質疑応答/名刺交換

1981年 東京大学法学部卒業。東京銀行(現三菱UFJ銀行)入行。東京銀行本店営業第2部部長代理(資源エネルギー融資、経済産業省担当)。東京三菱銀行本店産業調査部部長代理(資源エネルギー調査担当)。出向:石油公団企画調査部:現在はエネルギー・金属鉱物資源機構(資源エネルギー・チーフ・エコノミスト)。出向:日本格付研究所(チーフ・アナリスト:ソブリン、資源エネルギー担当)
2003年から和光大学経済経営学部教授。
著書:「資源開発プロジェクトの経済工学と環境問題」、「ガソリン本当の値段」、「石油がわかれば世界が読める」、その他、新聞、雑誌等への寄稿、テレビ、ラジオ出演多数。
