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EV電池材料を巡る世界の主要各社の競争戦略〜特許情報から炙り出す技術開発の潮流〜
10月 1日(水)
株式会社知財ランドスケープ 代表取締役社長 CEO
弁理士 AIPE認定 シニア知的財産アナリスト
山内 明(やまうち あきら) 氏
EVの最大市場たる中国では、ボリュームゾーンの本格普及に向けてインフラとしての充電システムが発展しているところ、近年、急速充電システムの普及機運が高まり、10分間でフル充電できる超急速レートを意味する6Cの実現に向けた電池開発と専用インフラ整備が着々と進んでいる。急速充電についてはTeslaがスーパーチャージャーと称して主要国で展開しており、特に整備が進んだ米国では他社がTeslaと提携してインフラを共有する動きも活発である。すなわち、もはや急速充電は、主要国向けでは電池メーカおよびEVメーカにとって必須の新競争軸となっている。
そこで本講座では、EVの新競争軸としての急速充電を巡る主要プレイヤの技術開発動向を炙り出して紹介することとし、具体的には、[1]急速充電を目的とした特許出願情報分析から浮かび上がるシリコン負極採用潮流に関するもの、[2]同目的を多数観点の技術の組合せにて果たそうとするもの、[3](トヨタ自動車などが大容量化/低コスト化とともに一挙解決を目論む)全固体電池によるもの、の3部構成で紹介したい。
1.シリコン負極による容量向上/急速充電の両立潮流
特許出願件数最大の活物質コーティングならびに特許出願件数急増のナノテク
(1)ナノ粒子化×微細孔:米ENEVATE
(2)カーボンナノチューブ併用:韓国勢(LG ENRTGY SOLUTION、SAMSUNG SDI、SK ON)
(3)2層構造×各層最適化:CATL、米GDI、韓国勢(大手3社ともカーボンナノチューブとの併用)
(4)ナノ粒子化×カーボンとの複合材化:中国勢(EVE ENERGY/CALB等)、米国勢(SILA等)中心に最大派
(5)コアシェル構造:中国勢の一部(SUNWODA等)
2.多観点発明(複数観点の技術の組合せ)に着目した補完分析
(6)正極材向け導電助剤としての高分散子カーボンナノチューブの適用志向(CATL等)
(7)正極材向けマンガンリッチ等によるコバルトフリー化との両立志向(SVOLT等)
(8)負極材向けチタン酸リチウム+ニオブ混合酸化物の適用志向(ECHION、東芝)
3.全固体電池実現との両立志向
(9)硫化物系全体:日韓米勢によるアルジロダイト型の優勢
(10)硫化物系+活物質コーティングによる低抵抗化:パナソニック/トヨタ自動車の急接近
(11)硫化物系+シリコン負極による大容量/急速充電化:トヨタ自動車/出光興産連合、SOLID POWER等
(12)酸化物系全体:ガーネット型の優勢:SK ON、POLY PLUS、QUANTUMSCAPE
(13)ハライド系全体:日本勢(パナソニック、住友化学) vs 中国勢(SVOLT、CATL)
4.質疑応答/名刺交換
大学、大学院では機械制御工学を専攻し、大手メーカでの開発業務、大手特許事務所での特許出願権利化業務、商社系知財戦略ベンチャーやシンクタンクでの知財コンサルティングの業務に従事する。シンクタンク時代にIPランドスケープ実践に役立つ知財情報戦略を確立し、互教の精神で啓発活動と手法改良に努める。現在は、IPランドスケープ専業の(株)知財ランドスケープの代表を務めつつ、最新手法IPランドスケープ3.0実践によるビジネスコンサルティングに取り組んでいる。2019年にはJAPIO理事長賞(活用研究功労者)を受賞。近著:「EV未来予測 世界5社の開発戦略」(2024年、日経BP社)、「IPランドスケープによって炙り出すTeslaの真の強み」(仮称、出版準備中)