■ポイント■
・温度を基軸とした個体レベルでの生理現象を体系的に詳解！
・生体の恒常性維持においても最も重要な因子である温度、温度ストレスによる生体応答システムを解説！
［序章］温度、体温と生命現象
・生物にとっての温度
・温熱生物学の発展
・化学反応としての生命現象と温度
・本書の目指すところ
＜1＞環境温度ストレスによる生体応答
1．超好熱菌の温度適応メカニズム
・はじめに
・超好熱菌の熱適応機構
・おわりに
2．メダカにおける環境温度依存的な性決定メカニズム
・はじめに
・メダカにおける遺伝的性決定
・高温ストレスによるオス化誘導機構
・高温ストレスによるメダカのオス化における視床下部-下垂体-間腎系の関与
・高温ストレスによるメダカのオス化における熱ショックタンパク質の関与
・高温ストレスによるメダカのオス化に関わる下流因子の探索
・高温ストレスによるメダカのオス化における酸化ストレスの関与
・おわりに
3．恒温動物におけるエピゲノムを介した寒冷環境への適応メカニズム
・はじめに
・褐色脂肪とベージュ脂肪細胞
・エピゲノムによる遺伝子発現制御
・体重と熱産生を制御するシグナル感知エピゲノム因子JMJD1A
・JMJD1Aはシグナル感知タンパク質として環境ストレスへの急性応答を担う
・ヒストン脱メチル化酵素JMJD1Aを介したベージュ化機構
・リン酸化JMJD1Aの脱リン酸化酵素MYPT1-PP1βの同定-
新規ベージュ脂肪細胞化制御因子の発見
・おわりに
4．不凍タンパク質による低温耐性メカニズム
・低温環境における適応戦略
・AFPの発見と不凍機能
・生体におけるAFPの役割
・AFPの活性とその測定方法
・AFPの構造と氷結晶結合の分子メカニズム
・AFPの遺伝的多様性と複雑性
5．メカノ受容体による低温適応調節メカニズム
・線虫C. elegansの低温耐性と温度馴化
・低温耐性を低下させるxdh-1変異はセカンドミューテーションとして見つかった
・神経コネクトーム情報をもとに見つかったメカノ受容体発現ニューロンの温度応答
・メカノ受容体DEG-1（DEG／ENaC）による温度受容
・今後の展望
6．外温性動物における高温ストレス応答の遺伝的基盤
・はじめに
・動物の体温調節機構
・温度環境の変化に対する進化的応答
・動物の温度感覚と温度感受性TRPチャネル
・今後の課題
＜2＞体温調節メカニズム
1．加齢による行動性体温調節低下メカニズム
・緒言
・熱移動
・温度感覚
2．視床下部のマイクロRNA-33による体温維持メカニズム
・はじめに
・miR-33欠損マウスは適応熱産生能が障害されている
・miR-33欠損マウスは寒冷環境における酸素消費量が低下している
・miR-33欠損マウスは交感神経活性が低下している
・寒冷刺激により視床下部におけるmiR-33の発現は誘導される
・GABAA受容体のサブユニットGABRB2、GABRA4がmiR-33の標的遺伝子である
・miR-33欠損マウスはGabrb2、Gabra4の発現増加により熱産生が抑制されている
・おわりに
3．体温調節におけるミトコンドリア分解の重要性とその分子機構
・はじめに
・脂肪細胞の種類とミトコンドリア機能の違い
・脂肪細胞におけるマイトファジーの分子機構
・まとめ
4．温度受容体と多様な因子による行動性体温調節の分子メカニズム
・はじめに
・マウスの行動性体温調節における温度受容体の役割
・ショウジョウバエにおける温度受容体と体温調節
・多様な要素によって制御されるショウジョウバエの体温調節行動
・おわりに
5．褐色脂肪組織による熱産生と体温調節
・はじめに
・褐色脂肪とUCP1による熱産生
・交感神経による褐色脂肪の活性化と寒冷応答
・ヒトの褐色脂肪の検出・評価と性質
・ヒト褐色脂肪による寒冷誘導非震え熱産生
・褐色脂肪の個人間変動
・褐色脂肪の年内および日内変動
・おわりに
6．体液による体温調節メカニズム
・生物にとっての水の役割
・カラダの蓄熱や放熱にかかわる水の役割
・汗と体温
・血液と体温、皮膚血管
・脱水と体温調節
＜3＞温度と体内時計
1．温度変化に対する睡眠覚醒リズム応答
・睡眠覚醒リズムを制御する2つの要因
・概日時計と温度補償性
・温度による睡眠圧変化
・おわりに
2．低温による生物リズムの消失
・生物的背景：概日リズムは低温下で停止する
・数理的背景：分岐理論
・概日リズムの低温停止現象
・イカ色素胞リズムの低温停止現象
・まとめと展望：温度「で」生物リズムを調べる
3．褐色脂肪細胞の体内時計による熱産生・エネルギー消費の制御
・はじめに
・褐色脂肪細胞と肥満
・体内時計障害と肥満
・褐色脂肪細胞の体内時計の生理的役割
・褐色脂肪細胞の体内時計障害と肥満
・おわりに
＜4＞温度と冬眠
1．シリアンハムスターにおける低温ショックタンパク質の冬眠特異的遺伝子発現メカニズム
・はじめに
・冬眠動物の障害耐性
・低温ショックタンパク質と障害耐性
・冬眠における低温ショックタンパク質の選択的スプライシング発現
・CIRP遺伝子における冬眠様選択的スプライシング発現の要因
・非冬眠動物における冬眠様選択的スプライシング
・おわりに
2．冬眠ハムスターにおける脂質代謝の同時亢進制御メカニズム
・はじめに
・哺乳類の冬眠〜深冬眠と中途覚醒
・脂肪蓄積型と餌貯蓄型の冬眠哺乳類
・白色脂肪組織の形態は冬眠に先立ち変化する
・冬眠期のiWATでは脂質代謝関連遺伝子群が高発現する
・PPARβγの活性化により冬眠に向けた脂質代謝関連遺伝子の発現が誘導される
・不飽和脂肪酸合成経路の遺伝子発現の増強
・Ucp-1陽性のベージュ様細胞が冬眠前期にWATで出現する
・まとめ
3．クマ類の冬眠と繁殖の制御メカニズム
・はじめに
・クマの冬眠の特徴
・冬眠前に食欲亢進により体脂肪を蓄える
・オスは冬眠中に精子形成を再開する
・メスは冬眠導入期に着床する
・メスは冬眠の中間期に出産する
・ホッキョクグマは冬眠するのか？
4．昆虫における休眠のホルモン制御機構
・昆虫の休眠の意義と特徴
・昆虫の休眠制御にかかわるホルモン
・卵休眠の制御機構
・幼虫休眠の制御機構
・蛹休眠の制御機構
・成虫休眠の制御機構
＜5＞温度と疾患
1．過敏性腸症候群と温度感受性TRPチャネルの関与
・過敏性腸症候群（IBS）の病態
・IBSの実験動物モデル
・IBSにおける温度感受性TRPチャネルの役割
・おわりに
2．低体温による膵傷害発症メカニズム
要約
・はじめに
・低体温ラット循環正常モデル
・低体温ラット循環不全モデル
・特殊染色（免疫染色、TUNEL）
・まとめ
・今後の展望
＜6＞温度と運動機能
1．暑熱環境における安静・運動時の生理応答メカニズム
・はじめに
・体温上昇時の熱放散反応（皮膚血管拡張および発汗反応）
・体温上昇時の心循環反応
・体温上昇時の呼吸および脳血流反応
2．暑熱下運動時における循環動態制御メカニズム
・はじめに
・暑熱下における局所運動および最大下運動時の循環動態
・暑熱下における最大運動時の循環動態と持久的運動パフォーマンス
・暑熱下における長時間運動時の循環動態（脱水の影響）
・おわりに
3．低温下における体温調節反応と運動時の低体温症発症メカニズム
・低温下で生じる低体温症とその要因
・運動時低体温症の発症メカニズム
・まとめ
＜7＞温度と植物の生理反応
1．熱ショックタンパク質の遺伝子制御による植物の高温順化メカニズム
・はじめに
・植物の環境順化のメカニズム
・植物の高温順化のメカニズム
・高温順化時の低分子HSP遺伝子発現制御の分子機構
・結論と展望
2．ザゼンソウの恒温性メカニズム
・ザゼンソウの恒温性
・ザゼンソウの温度センシングモデュールはどこに存在するのか？
・体温振動による温度センシング
・ザゼンソウ肉穂花序に存在する計時メカニズムの存在
・ザゼンソウ肉穂花序における温度と逆相関を示す呼吸活性
・呼吸反応に関わる活性化エネルギー
・化学平衡の平衡点のシフトと温度センシング
・負の活性化エネルギーの生成に関わる
分子メカニズムとシアン耐性呼吸酵素
・おわりに
＜8＞解析／計測技術
1．遺伝子コード可能な温度プローブを利用した高速生体温度イメージングによる熱物性解析
・はじめに
・細胞レベルでの計測を可能にする微小な温度計
・温度計としての蛍光タンパク質
・レシオメトリック遺伝子コード型温度プローブgTEMPシリーズ
・細胞内温度不均一性とその検証
・gTEMPシリーズによる細胞内の局所的な熱動態の計測
・おわりに
2．量子ナノ粒子による細胞温度計測技術
・はじめに
・色欠陥中心を用いた温度計測法
・光検出電子スピン共鳴を用いた温度計測の実際
・生体試料への応用
・おわりに
3．細胞小器官の温度測定のための蛍光温度センサー
・細胞小器官から始まる熱産生
・細胞内温度計測用の蛍光温度センサー
・低分子型温度センサーの応用例
・蛍光温度センサーで得られるデータの解釈の留意点
・結論と今後の展望
4．低分子蛍光温度計による1細胞の温度計測技術とその応用
・はじめに
・細胞内局在
・ナノ粒子型、およびシート型による頑強性の発現
・おわりに
5．X線1分子追跡法によるTRPチャネル内部運動計測技術
・タンパク質内部の運動を見る
・DXTによるTRPV1の運動解析
・将来展望：広がるDXT、DXBの応用
■監修者■
永島 計
早稲田大学 人間科学学術院 教授
