SSK 株式会社 新社会システム総合研究所

食品分散系の制御技術と応用-素材、構造、加工、食感-

商品No.
R02V1058
出版月
2024年 3月
価格

印刷タイプ 67,100円 (税込)

ページ数
B5判 311ページ
発行<調査・編集>(株)シーエムシー出版
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レポート内容
■ポイント■
 ・食品の大部分を占める分散系食品! 開発現場で求められる“食感”や“加工性”を実現するための技術を詳述!
 ・食品分散系のレオロジー・構造・物性などの基礎から、AIをはじめ最新の情報処理技術による食感分析・評価法、
  新食感・新素材に繋がる具体的事例を徹底解説!
 ・超高齢社会、SDGs、代替タンパク質など時流に沿った食品製造の一助となる一冊!

■概要■
 私達が食する食品のほとんどは、乳化物、泡沫、ゲル、ペースト等の分散系食品である。そこでは、それぞれの成分がコロイド状の粒子、あるいはもっと大きな集合体を形成し、相互に影響しあうことによって全体の品質、すなわち加工特性や食感が決定される。特に、成分の集合体間では界面が形成されることが多く、この界面の生成・維持・崩壊、界面を通しての物質移動、界面上における諸反応が分散系食品の全体の性質に大きな影響を与える。そのような観点から、以前に私達は「食品の界面制御技術と応用」(2011年、(株)シーエムシー出版)を上梓した。
それ以来の当該分野での進歩は著しく、分散系に関する基礎的知見に加え、分散系食品の加工性や美味しさを評価し向上させるための技術や新素材の成果も続々と報告されており、それらの知見を取りまとめた著書の必要性を感じていた。
 一方、前書の刊行から今日に至るまでに、大きく変化した食品全般を取り巻く社会的情勢について考えてみると、日本では「高齢化社会」から「超高齢社会」に既に移行し、そこでは「健康寿命」の延伸が最大の社会的要請の一つとなっている。加齢に伴う咀嚼嚥下機能の低下は、食事を通した栄養素摂取を困難にし、高齢者の健康を損なう主原因となるが、その解決のために、高齢者の咀嚼嚥下機能を考慮した食品の開発が喫緊の課題となっている。その一方で、一般消費者の購買を刺激するために、新たな食感創出など、嗜好性を高めた食品開発を推進する必要性も益々大きくなっている。世界的な情勢に目を移せば、2015年9月の国連サミットで採択された、SDGsは、一般的な社会通念として浸透し、国の施策、企業の経営姿勢や目標の設定においても、無視出来ない理念となっている。農業や食品産業においても、環境に配慮した持続的な生産手段やクリーンラベルへの関心が高まり、食品素材の選択や加工技術の発展にも、その影響が大きく表れる情勢となってきた。また生成AIの出現など、情報処理技術の急速な進展と普及が、今後の食品産業、特に加工技術や品質評価技術に与える甚大な影響についても考慮しなければならない。
 本書は、元々、上記の前書「食品の界面制御技術と応用」の続編として企画されたものであるが、その後の技術的な進展だけに焦点を当てたものではなく、それ以降大きく変化した外部状況も加味して、執筆項目や執筆者の選択を試みた。技術的なことに関すると、前書でも分散系に関する基礎的知識やレオロジーの理論等については解説されているものの、本書では、個々の分散系を対象として、それらを実際に研究されている専門家に、基礎的な概念から、構造と物性の関係などを丁寧に解説していただいている(第Ⅰ編)。第Ⅱ編以降では、昨今の状況より求められている食品素材、分析法や評価法、その実際の応用例について解説をお願いした。第Ⅱ編では、SDGsの観点から注目を集める植物原料素材のタンパク質や多糖類ナノファイバー、ピッカリング粒子、ミクロゲルについて紹介をいただいている。また、新食感や高齢者に適した食感をもつ食品の構造や物性に関する評価法については第Ⅲ編で、その応用編として、ヒトにおける食感評価(シミュレーションも含む)および実際の食品における品質制御の事例などを第Ⅳ編で紹介いただいている。
-CONTENTS-
【第Ⅰ編 食品分散系の種類と構造】
<1>食品分散系概論
1.はじめに

<2>液状分散系の構造と安定性
1.はじめに
2.液状分散系の構造と安定性

<3>液状分散系のレオロジー
1.はじめに
2.応力とひずみ
3.粘度
4.流動開始および停止後の過渡的応答
5.データ例

<4>固体・ゲルのレオロジー
1.食品レオロジーの意義
2.変形と流動
3.弾性
4.粘性
5.塑性
6.線形粘弾性
7.非線形粘弾性

<5>泡沫の構造およびレオロジー
1.はじめに
2.シャボン玉
3.泡沫
4.泡沫のレオロジー
5.泡沫の基板への塗り広げ挙動
6.おわりに

<6>卵白タンパク質の加熱ゲル化性
1.はじめに
2.卵白タンパク質の加熱ゲル化性
3.乾燥卵白の加熱ゲル化性
4.新しい加熱ゲル化制御方法の探索
5.今後の展開

<7>多糖類ゲルの構造と物性
1.ダブルヘリックスを形成する多糖類ゲルの構造と物性
2.低メトキシペクチンゲル、アルギン酸ゲルの構造と物性
3.その他の多糖類ゲル

<8>油脂含有食品の構造と物性
1.はじめに
2.油脂含有食品の製造と状態変化
3.油脂の結晶化・融解特性
4.マーガリン・ショートニングの構造と物性

<9>分散体が非晶質食品の物性に及ぼす影響
1.はじめに
2.非晶質食品のガラス転移
3.パルプおよび微結晶セルロースが非晶質食品粉末の固着に及ぼす影響
4.結晶質材料が圧縮成型した非晶質食品の硬度に及ぼす影響
5.空隙および油脂が非晶質焼成食品の食感に及ぼす影響

【第Ⅱ編 分散系食品創出のための新素材】
<1>食物繊維のナノファイバー化
1.はじめに
2.ナノファイバー化技術
3.セルロースナノファイバー(CNF)の腸内細菌叢改善作用、肥満抑制効果、運動との相乗効果
4.微粒子化おからの腸内細菌叢改善作用と肥満抑制効果
5.微粒子化おからが分離大豆たん白(SPI)のゲル形成性とその分子間力に与える効果
6.微粒子化おからの製パン性
7.最後に

<2>農産物の微細化粒子および天然高分子のミクロゲル粒子による分散系の形成・安定化
1.はじめに
2.農産物粒子の分散系への利用
3.タンパク質および多糖類ミクロゲルの分散系への利用
4.おわりに

<3>Plant-based foods素材としての大豆タンパク質
1.はじめに
2.大豆のタンパク質組成
3.タンパク質組成と物理的機能
4.魚介類の代替(グロブリンで調製するトロ刺し風素材)
5.豆乳クリーム(大豆オレオシンリッチ素材)
6.低脂肪豆乳
7.最後に

【第Ⅲ編 分析法および評価法】
<1>液状食品の食感評価に対応する物性測定
1.諸言
2.液状食品のレオロジーを評価する装置
3.レオメーター.動的粘弾性測定装置
4.測定の注意点

<2>固体状食品の食感評価に対応する物性測定
1.はじめに
2.食品物性の機器測定
3.おいしさの食感評価測定例
4.サクサク感の見える化
5.介護食の見える化
6.一定応力制御での変形-回復測定のクリープ粘弾性解析を使った、膨張・収縮などの見える化
7.まとめ

<3>レオロジー的手法と他の分析法の組み合わせによる解析
1.はじめに
2.電気化学インピーダンス測定
3.レオ・インピーダンス測定事例
4.おわりに

<4>アコースティック・エミッション法を用いた多孔質食品のクリスプネス評価
1.多孔質食品のクリスプネス評価
2.アコースティック・エミッション法による多孔質食品のクリスプネス評価
3.おわりに

<5>フード3DプリンタとAIを活用した次世代食感分析法と製造法開発
1.はじめに
2.食感をビルドアップ式に創り出す
3.食品分析法
4.おわりに

<6>食品の内部構造の可視化と食感予測
1.はじめに
2.内部構造の可視化
3.食感予測
4.おわりに

<7>ホイップドクリーム・パン・スポンジケーキ類のきめ・食感評価
1.はじめに
2.きめの評価
3.ケーキ類の食感(口どけ感および崩れやすさ)評価
4.おわりに

<8>ゲル状食品の食感の推定
1.緒言
2.モデルゲル試料および官能評価
3.押圧システムの概要と圧力分布データの取得
4.濃度共起行列を用いた食感推定
5.Convolutional Neural Network(CNN)を用いた食感推定
6.結言

【第Ⅳ編 応用編-加工や食感制御に活かす技術-】
<1>低オイルマヨネーズタイプについて
1.はじめに
2.マヨネーズの歴史
3.マヨネーズと低オイルマヨネーズタイプの日本農林規格(JAS)について
4.低オイルマヨネーズタイプの利点
5.乳化形態分類と製造方法の違い
6.マヨネーズと低オイルマヨネーズタイプの構造上の違いと油滴径の観察について
7.マヨネーズと低オイルマヨネーズタイプの動的粘弾性の違いについて
8.まとめ

<2>高齢者用食品の物性と嗜好性の改善
1.はじめに
2.咀嚼・嚥下機能からみた注意が必要な食品の形態と調理による食感制御
3.咀嚼・嚥下困難者のための高齢者用食品(介護食品)の物性基準
4.高齢者用食品として物性と嗜好性改善のための調理・加工の研究
5.高齢者用食品の食感制御による物性と嗜好性の改善

<3>大麦粉製品における生地の力学特性制御とその品質及び嗜好性
1.はじめに
2.大麦粉製品における生地の力学特性制御
3.大麦粉の調理品への応用
4.おわりに

<4>「潤滑と摩擦」ならびに「流動と変形」を考慮した新規の動的食品特性評価方法
1.はじめに
2.動的食塊挙動評価システムについて
3.食塊に関する力学的指標の算出方法
4.食品の評価事例
5.おわりに

<5>コンピュータ・シミュレーションを用いた嚥下時の食塊挙動の「見える化」
1.はじめに
2.開発の背景
3.立体嚥下動態シミュレータ開発のために必要な技術的なブレイクスルー
4.立体嚥下動態シミュレータが示す食品開発・研究のための新しい視点
5.おわりに

<6>介護食における食べる機能の段階に応じたテクスチャーの検討
1.はじめに
2.概説・総論
3.おわりに

<7>油脂粒子が分散系食品の安定化に及ぼす影響
1.はじめに
2.枯渇凝集による相分離に与える油脂粒子の影響
3.ホイップドクリームの気泡界面への油脂粒子の吸着と構造形成
4.おわりに

<8>パスタの表面粗さや内部構造の観察
1.はじめに
2.パスタの製法と種類
3.パスタの品質に影響する要因
4.パスタの表面構造と表面粗さについて

<9>乳化剤によるエマルションの安定性制御
1.はじめに
2.乳化剤について
3.乳化剤の性質と機能
4.ミルクコーヒーにおける乳化安定性制御
5.乳代替乳化物の乳化安定化制御
6.ホイップクリームにおける乳化安定性制御
7.ケーキ生地における乳化安定性制御
8.おわりに

<10>乳化剤の添加相による機能特性の制御:固形状食品および液状食品の事例
1.はじめに
2.乳化剤の種類と食品製造における役割
3.乳化剤の添加相が固形状食品の品質に与える効果
4.乳化作用を有する天然由来粉末の添加相が液状食品の品質に与える効果
5.おわりに

■監修■
松村 康生
京都大学
松宮 健太郎
京都大学
小川 晃弘
三菱ケミカル(株)
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