■ポイント■
・電池の安全性は電気化学の原理を逸脱しないこと、これに尽きる!
・工業製品としての安全性はメーカーのポリシー次第、できますか?!
・電池コストダウン=安全性低下、これは残念ながら本当でしょう!
・電池自体の安全性と応用分野での安全維持、この両輪が必須!
・この先1年は国内の消防関係規則の確定が継続する、目を離すな!
・グローバルな安全性規格の新規改訂はない、規格では安全の担保は不可!
・硫化物系の全固体電池の硫化水素対策は、何とかなっているが…
■概要■
本書は2023年7月に発刊した、「リチウムイオン電池の安全性確保〜
関連する規制・規格と表示ルール2023〜」の改訂版である。2023年から2025年通期にわたる、国内外の法令、規制や規格の変化を、各章に分けてまとめた内容である。
この間のリチウムイオン電池と、その安全性を巡る問題は多くの変遷があった。その背景には、EVなどの市場の大きな変化、再生可能エネルギー関連の蓄電需要、グローバルな電池生産の行き詰まりと、コストダウンの力学などが存在する。左記に関しては本書では要点のみに触れるので、詳細は参考資料(2、29)を参照願いたい。
精査した範囲では2023年から2025年の間に、JISやULなどの主要規格において、根本的な試験内容の改訂は見られない。これは規格だけを厳しくしても、安全性の向上にはつながらないという学習効果の現れである。
今回追加は第7章以降に示した。「〜電池を使う視点からの安全性への対応〜」という副題にしたのは、この間に筆者が国内のEVメーカーで、電気や機械の技術者を対象に安全性の講義をした際の体験から出たものである。改めて考えれば、2023年版は電池を設計・製造する立場であり、先の電気技術者などの視点とは異なる。
全固体リチウムイオン電池は、特にEV用途においては、実用化への姿が見え難い。原理的には硫化水素の危険性は回避できないので、ここで基本的な事項を提示しておきたい。
■調査・執筆■
菅原 秀一
北陸電力(株)/ENAX(株)共同研究 PM/プロジェクト・マネージャー FS/フィジビリティースタダー
構成 ※ 第1章〜第6章は2023年版と同内容になります。
第7章〜第10章が今回追加分となります。
参考資料一覧
はじめに
第1章 リチウムイオン電池の基本構成と安全性確保
1.1 基本用語と範囲
1.1.1 安全性試験の対象と表記
1.1.2 単電池、組電池とシステム
1.1.3 組電池とシステム JIS C 8715-1引用 など
1.2 電池の用途拡大と発火事故の経緯
1.2.1 大中小、電池システムの容量と重量(裸セル)
1.2.2 単電池から組電池システムへのシミュレーシ ョン など
1.3 電池(セル)の構成、構造と基本特性
1.3.1 正・負極の電気化学反応
1.3.2 電池(セル)の基本構成
1.3.3 リチウムイオン電池の特徴 など
1.4 電気化学的な要件と安全性
1.4.1 ニッケル水素電池の“ノイマン機構”(文献引用)
1.4.2 二次電池の電解液(比較)水溶液(H+)、有機電解液(Li+)、ゲル(Li+)と固体(Li+)
1.4.3 セルの正常動作領域と正負極電位 など
1.5 セル設計と製造工程
1.5.1 リチウムイオンの安全性と材料・設計・運用
1.5.2 安全性に関する技術情報の流れ
1.5.3 エネルギー設計、パワー設計と電極面積 など
1.6 安全性維持の要件(列記)
1.6.1 RISK & HAZARD(1)、電池とシステム
1.6.2 RISK & HAZARD(2)、電池とシステム
1.6.3 リチウムイオン電池の発火・破裂事故の原因 (リスクとハザード) など
1.7 参考資料(正負極材、有機電解液ほか)
1.7.1 正極材の容量とセルの比容量モデル
1.7.2 正極剤のWh特性と正常域
1.7.3 単元LNO LiNiO2 など
1.8 参考資料2(新たな正極材の特性)
1.8.1 NMCxyz系正極材の放電特性(1)Ah/kg
1.8.2 NMCxyz系正極材の放電特性(2)Wh/kg
1.8.3 NMCxyz系正極材の放電特性(3) など
第2章 安全性規格と試験の概要
2.1 測定規格と安全性規格(規格の役割分担)
2.1.1 リチウムイオン電池の規格、αβγθ(1)
2.1.2 リチウムイオン電池の諸規格と関連
2.1.3 各種の安全性試験規格と機能分担 など
2.2 内外の規格一覧と試験対象(セル、モジュールとシ ステム)
2.2.1 安全性試験の周辺(1)電池から応用製品へ、 規格/法規制/GL
2.2.2 安全性試験の周辺(2)原材料>電池>リサイ クルの流れ
2.2.3 安全性試験の対象、セル、モジュールとユニッ ト など
2.3 安全性試験の想定域と過酷度
2.3.1 安全性試験の想定領域(概念図)
2.3.2 試験の性格、正常と破壊
2.3.3 安全性試験と時間の経過 など
2.4 安全性要求事項(合否判定)
2.4.1 安全性試験の特異性(1)機械的な試験
2.4.2 単電池の安全性試験、機械的・熱的な試験
2.4.3 安全性試験の特異性(2)電気的な試験 など
2.5 参考資料_1(電池のAh容量と応用分野ほか)
2.5.1 安全性に関する電池のAh容量(大中小)
2.5.2 セルの外装型式と主な用途(1)
2.5.3 セルの外装型式と主な用途(2)2010 以降 など
2.6 参考資料_2(安全性試験チャート、過充電ほか)
2.6.1 過充電 30A/定格 20A=1.5C CC充電
2.6.2 外部(強制)短絡試験
2.6.3 釘刺し=(圧壊+強制内部短絡*) など
第3章 国内外の安全性規格・試験の各論と実務対応
3.1 JIS C 8712、8714と電気用品安全法
3.1.1 安全性試験に関する日本国内の経緯
3.1.2 安全性試験に関するJIS規格の分担(1)
3.1.3 安全性試験に関するJIS規格の分担(2) など
3.2 JIS C 8715-1、-2(2012-2019)
3.2.1 JIS C 8715-1,-2 2012
3.2.2 製品開発と製造における規格要求事項の流れ
3.2.3 製品開発と製造における規格要求事項の流れ(2) など
3.3 UL、TUFと認証制度
3.3.1 ULの業務と役割
3.3.2 米国認定機関NRTLの製品安全マーク
3.3.3 TUV Rheinland(R)ドイツ認証例 など
3.4 UN 危険物輸送勧告と試験項目と運用
3.4.1 UN国連危険物輸送基準勧告(オレンジブック Ⅲ)
3.4.2 UN国連危険物輸送基準勧告
3.4.3 国連分類による危険物クラス* ( *Hazard Class) など
3.5 最近の国内法改正と国際化
3.5.1 JIS(日本産業規格)リチウムイオン電池関係
3.5.2 電気用品安全法、最近の改正 令和 4(2022)年
3.5.3 電気用品安全法、技術基準解釈(別表第九)令和4(2022)年12月 など
3.6 電池の製品仕様、定格と購入手順
3.6.1 (単)電池仕様書の項目例
3.6.2 特性値などの英文、和文の表現
3.6.3 安全性確保の為の電池(セル)の購入方法 など
3.7 安全性試験の計画、目的と手順
3.7.1 安全性試験のステップ(10Ah単電池モデル)
3.7.2 セルのサイズと評価事項(活物質とセルの評価)
3.7.3 評価用500mAhセルと製品5Ah セル など
第4章 電池応用製品ごとの規格・規制と安全性試験
4.1 携帯機器類分野
4.1.1 IEC 62133-2 *リチウムイオン電池
4.1.2 IEC 62133-2(2017)携帯用電池
4.1.3 IEC 62133-2(2017)携帯用電池試験項目
4.2 BEVなど自動車分野
4.2.1 EV発火事故、BYD車ほか
4.2.2 2022通期のBEV販売台数、メーカー別
4.2.3 搭載電池kWh容量と電圧諸元 など
4.3 BEVの充電インフラの安全性と法規制
4.3-1 インフラ全体の問題
4.3.1 急速充電の出力kWと充電時間
4.3.2 国産BEVの充電、普通&急速 2023(指数) など
4.4 医療(用)機器分野
4.4.1 医療機器の具体例と電源配備
4.4.2 ECMO体外式膜型人工肺
4.4.3 医療機器の規制に関する国際比較(厚労省資料) など
4.5 再生可能エネルギーの蓄電システム(定置)
4.5-1 住宅用蓄電システム
4.5.1 経済産業省 FIT2020
4.5.2 住宅用電池ユニットの配置例(室内) など
第5章 電池と応用製品の表示(マーキング)と背景の規則等
5.1 各国の表示アイコン
5.1.1 認証取得のアイコン(1)ULなどグローバル
5.1.2 認証取得のアイコン(2)国別のアイコン
5.1.3 中国市場におけるマーキング
5.2 EU電池指令
5.2.1 EU電池指令 全般
5.2.2 EU電池指令 新追加・旧
5.2.3 EU電池指令の化学物質規制 など
5.3 電気用品安全法
5.3.1 電気用品安全法の表示(モバイル用途)
5.3.2 スマートフォン用電池の比容量とPSE、CEマ ーク
5.3.3 電気用品安全法の経緯 平成20(2008)〜
5.4 リサイクル関係法規
5.4.1 資源・環境関係法の相互関係と機能
5.4.2 資源有効利用促進法(2001日本)
5.4.3 電池工業会のマーキングガイドライン(1) など
5.5 表示の実例とまとめ
5.5.1 マーキング IEC 62133-2ほか 例1
5.5.2 マーキング IEC 62133-2ほか 例2
5.5.3 マーキング 多国籍 例3 など
第6章 安全性問題の根本解決への模索
6.1 リスクとハザード
6.2 ケミカルハザード(電解液、電解質と固体電解質)
6.3 BEVの発火事故の現状と対策
6.4 全固体リチウムイオン電池
第7章 2025年末時点における主要な安全性規則等の改訂状況
7.1 JIS、電気用品安全法などの国内の規制
7.1.1 日本工業規格JISC8715-2:2019
7.1.2 電池のリサイクルとリユース、国内関係法令
7.1.3 産業用リチウムイオン電池と法規制、2024〜 など
7.2 UL、UN、ISO、ICEなどグローバルな規制
7.2.1 安全性認証規格などの分野と役割
7.2.2 EU電池指令関係の情報、改訂など
7.2.3 IEC62619 Ed.2.0 2022-05 など
7.3 UN国連輸送安全、バーゼル法など国際間の移動安全
7.3.1 国連危険物輸送勧告(TDG)2023改 第8ver
7.3.2 バーゼル条約/法の現状、経済産業省2024
7.3.3 廃電池とバーゼル法の規定 など
7.4 EV用電池とシステムの安全性試験規格
7.4.1 UN/ECER100
7.4.2 EV用リチウムイオン電池の安全性規格
7.4.3 EVの廃車と廃電池リサイクル、種々のケース など
7.5 追補 最近のモバイルバッテリーの発火事故と対応
7.5.1 モバイルバッテリー発火事故、公表メーカー2025/12
7.5.2 モバイルバッテリーの安全性確認と対策
第8章 消防法の安全性対応の新たな状況
8.1 消防機○○○通達と実施状況(消防庁)
8.1.1 国内法、危険物とは….
8.1.2 有機電解液の沸点、引火点と消防法の分類
8.1.3 第四類引火性液体(消防法危険物) 指定数量 など
8.2 バッテリー火災へ対応
8.2.1 工場等におけるリチウムイオン蓄電池に関する危険物規制について
8.2.2 セル>(パック+BMS)>蓄電システム
8.2.3 リチウムイオン電池と消防法 など
8.3 最近のEV発火事故、韓国と輸送船
8.3.1 EV運搬船の火災、新聞報道日経紙2024/03/07参照
8.3.2 韓国のEV火災、新聞報道日経紙2024/08/15参照
8.3.3 韓国のEV火災報道2024/
08日経モビリティー2024/08/30参照 など
第9章 全固体電池と硫化物系電解質の安全性
9.1 硫化物の化学と固体電解質
9.1.1 硫化物の一般特性、化学便覧データ
9.1.2 硫化物Sulfideと硫酸塩Sulfate
9.1.3 硫化リチウムの合成と硫化物系電解質の製造(出光興産) など
9.2 硫化水素の特性と取り扱い
9.2.1 硫化水素の反応、意外と知られていない
9.2.2 H2Sガスのppmとmg/m3濃度の関係
9.2.3 H2Sガスのppmとmg/m3濃度の関係(データ) など
第10章 まとめ
10.1 リチウムイオン電池と周辺の技術分野(1)
10.2 リチウムイオン電池と周辺の技術分野(2)
10.3 JISC8715-2、品質計画と工程管理
安全性試験関係 英和技術用語 JISとUNECE