「本編」の内容を増補。エンタメ各業界の未来像がポストパンデミックの世界でどう変化していくのかを予測
エンターテインメント・ビジネスの未来2020-2029
ポストパンデミック編
■概要■
エンタメ業界は、ポストパンデミックの世界でどう変化していくか。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックは、メディア・エンターテインメント産業のエコシステムを潰滅寸前まで追い込み、ライブ・エンターテインメントの領域も計り知れない打撃を受けました。一方で、通信技術を活用して娯楽を届けるメディア・エンターテインメント分野では、企業やサービスに一種の追い風が吹いています。また、大手IT企業が、 あらゆるコンテンツを一手に握る「スーパープラットフォーム」を目指す動きも顕著になってきました。
本レポートは、『エンターテインメント・ビジネスの未来2020-2029』(2019年12月発行)で描いた映画、放送、音楽など各業界の未来像やビジネスモデルが、ポストパンデミックの世界でどう変化していくかを予測します。
■著者メッセージ■
エンターテインメントの進化があらゆる産業に影響を及ぼす新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による世界規模のパンデミックは、
メディア・エンターテインメント産業のエコシステムを壊滅寸前まで追い込んだ。基幹事業である、音楽、演劇、スポーツ興行は軒並み
開催不能に陥り、映画に代表される映像ビジネスも、劇場と制作現場は、感染予防対策により閉鎖や縮小を迫られ、サプライチェーンが分断された。
グローバル市場での損失は、16〜17兆円に及ぶと推測され、回復には少なくとも2年を要すると見られている。しかし、エンターテインメント産業は、疫病や大恐慌、戦争、テロが勃発しようとも、滅亡することなく、新たな活路を見出し人々の生活の中で巧みに存続を図ってきたことは、歴史が証明している。例えば、在宅時間が大幅に増加した消費者に対して、オンラインで音楽や映像を届ける
サービスは、コロナ禍にあっても驚異的な躍進を遂げている。世界最大手の米ネットフリックス(Netflix)社は、日本だけでも19年9月から20年8月までに200万人の新規契約者を獲得した。また、在宅勤務の長期化は、アマゾン・ドット・コム(Amazon.com)社に代表される通販事業の成長に拍車をかけ、彼らのコンテンツ事業進出の起爆要因となった。
既存メディア・エンターテインメント産業と通信産業の競合、そして融合は、コロナ禍により急速な展開を見せている。既存ビジネス
モデルが、僅か1年足らずで覆されたのだ。こうした変化の潮流を的確に分析し、エンターテインメント産業の未来像を読み解くことは、
至難ではあるが、価値ある試みであると確信している。
北谷 賢司
米ワシントン州立大学レスター・スミス栄誉教授/金沢工業大学虎ノ門大学院教授/米アンシューツ・エンターテイメント・グループ(AEG)アジア担当EVP、日本代表。
<1>メディア・エンターテインメントの未来
1.コロナ禍のメディア・エンターテインメント産業への影響
・メディア・エンタメに壊滅的な打撃
・メディア・エンタメには追い風も
・迫る主役の交代
2.メディア・エンターテインメントの構造変化が加速
・パンデミックで迫られる軌道修正
・ストリーミングが拡大の一途
・4大メディア・グループが本腰
・広告のネットシフトも加速
・映画は劇場からストリーミングへ
・ウインドウは大幅に縮小
・演劇のストリーミングも
・音楽もストリーミングが牽引
・社交体験としてのゲーム
・プロスポーツをゲームで補う
・強すぎる大手に逆風も
・ポストコロナの制作体制
<2>ライブ・エンターテインメントの未来
1.コロナ禍のライブ・エンターテインメント産業への影響
・オンラインライブの挑戦
・世界的に苦境が続く
・演劇、スポーツ、IRも同様
2.ライブ・エンターテインメントの新常態を探る
・ライブ・エンタメ復活の懸案
・メディアとライブの再構成
・会場のスマート化を加速できるか
・顧客情報を活用したビジネスに
・スマート化の裏方に大手IT企業
・日本は技術のショーケースどまり
・旧来の業界慣習から脱却を
・国際的な衛生基準を取得
<3>未来を創る技術キーワード
1.コロナ禍の技術開発への影響
・加速するデジタル技術の導入
・技術のハードルは変わらず
・インフラの整備に時間
・事業改革に踏み切れるか
2.VR/AR技術への期待が高まる
・「現実」を超える可能性
・市場拡大への期待と失望の歴史
・製品の仕様は着実に改善
・演劇やコンサート、映画祭も
・高度なARの実現基盤が整う
・ビジネス用途が普及を後押し
<4>映画の未来
1.コロナ禍の映画産業への影響
・制作者の自主配給とVODヘシフト
・人気作品頼みが加速
・制作現場に最大の打撃
・資金調達が暗礁に乗り上げる
・消費者にサブスク疲れ
・注目株は無償VOD
2.配給の主流は映画館からネットへ
・主流の交代を決定づけたCOVID-19
・窮地に追い込まれる映画館
・映画館復活へのあの手この手
・技術に代替される懸念も
・ネットフリックスか、ディズニーか
・ビジネスモデルは流動的
・日本は配信基盤で巻き返しは困難
<5>放送の未来
1.コロナ禍の放送産業への影響
・放送局の業績が悪化
・OTTでも海外勢に勢い
・国の支援に期待か
2.放送からOTTへの移行が不可避に
・米国は広告減を見越した体制を整備
・日本は数年で米国と同様の市場環境に
・勢いに欠ける国内サービス
・変化する放送局の意識
・危機は地方局やラジオから
<6>音楽の未来
1.コロナ禍の音楽産業への影響
・定額制音楽ストリーミングは躍進
・ストリーミングは音楽の主流
・音楽産業全体は大幅減
・オンライン配信が当たり前に
・「20年遅れ」の日本は変わるか
2.ストリーミングが変える音楽産業
・音楽ストリーミングが成長を牽引
・支払額の低下と広告への期待
・ポッドキャストを強化
・アーティストも顧客に
・音楽産業における中国勢の台頭
・音楽業界の常識が一変
・国内産業は旧式ビジネスから脱皮を
<7>演劇の未来
1.コロナ禍の演劇産業への影響
・ブロードウェイの停止と再開時期
・ウエストエンドの再開と再中断
・日本の演劇も一進一退
・カギとなる変動価格やEC連動
・コロナ禍で生まれる新発想
・頼みの綱はデジタル技術
・何よりもコンテンツ強化
<8>スポーツの未来
1.コロナ禍のスポーツ産業への影響
・スポーツビジネスの停滞
・五輪延期がもたらす損失
・メジャースポーツを支える放映権
・国内プロスポーツは人気回復できるか
2.プロリーグの停滞と台頭するeスポーツ
・米プロリーグも苦戦
・新技術の採用が加速
・eスポーツに期待をかける
・Z世代の関心を引く
・試合より普通のゲームプレー②
・スターを身近な存在に
・新時代のファンの姿
<9>IR・カジノの未来
1.コロナ禍のIR・カジノ産業への影響
・国内のIR計画は大きく変わる
・国内におけるIRのイメージは悪化
・IR整備法の是正が必要
<10>他分野・業界への影響
1.コロナ禍のモビリティーへの影響
・エンタメ周辺産業にも傷痕
・自動運転やEVは着々と進む
・自動車業界にもGAFA
2.コロナ禍の都市計画への影響
・スマートシティと感染症対策
・解はエンタメ中心都市か
・エンタメ都市がスマート化
3.コロナ禍の観光への影響
・最大級の打撃を受けた産業
・VRやアバターで代理旅行
4.コロナ禍の消費財・リテールへの影響
・店舗とECで大きく明暗
・チャットボットやARが活躍
5.コロナ禍の広告への影響
・広告のネット移行が加速
・AR広告が成長へ