■ポイント■
・2030年度までにガソリンにバイオエタノールを最大10%混合する目標が決定!
・バイオ液体燃料製造に関する開発技術の現状を多面的に紹介した一冊!
・バイオエタノール、バイオディーゼル、航空燃料(SAF)、バイオメタノール、バイオブタノールなど、バイオ液体燃料の最新動向を詳細に解説!
■概要■
2021年に閣議決定された「第六期科学技術・イノベーション基本計画」では、我が国の目指すべき未来社会像を「持続可能性と強靭性を備え、
国民の安全と安心を確保するとともに、一人ひとりが多様な幸せ(well-being)を実現できる社会」と示している。
また、2024年の「第六次環境基本計画」でも、「地上資源を基調とし、環境負荷の総量を抑えて自然資本のこれ以上の毀損を防止するとともに、
自然資本を充実させ良好な環境を創出し、持続可能な形で利用することによって、ウェルビーイング/高い生活の質に結び付けていく」と述べられている。
しかし、これらの理念を現場の研究開発に落とし込む際、その解釈が必要以上に狭く理解されることがある。例えば、「地上資源を基調とする=
バイオマスを使えばよい」、「環境負荷の総量を抑える=特定の狭い範囲で環境負荷が低減していればよい」、「持続可能な形で利用=廃棄物を
使えばよい」というように解釈され、特定の技術にのみ関心が向けられ、社会実装や持続可能性の観点が置き去りになることが少なくない。
現在、日本の技術力低下が指摘され、「失われた30年」と言われるように、バブル崩壊以降、新たな技術の実用化例は多くない。
実際に、国家プロジェクトで建設されたバイオ液体燃料製造プラントの多くが、補助金終了後に採算が取れず撤去された事例がある。
本書は、バイオ液体燃料製造に関する技術を「一覧(メニュー)」として示すものである。重要なことは、一つの技術だけで課題を解決できるわけ
ではなく、地域の特性に応じて「どの技術を」「どう組み合わせて」社会の中で持続的な生産と利用のシステムを構築していくのか、ということである。それぞれの技術には、必ず利点と課題がある。
それらを十分に理解している研究者自身が、行政や住民と共に未来の社会像を描き、その実現に有効な技術を選択し、組合せ、システムとして
設計していく支援を行うことが期待される。研究者にとって最善と思われる技術やシステムが、ユーザーにとって最適とは限らない。
そのため、ユーザーと研究者が対話を重ね、使いながら技術やシステムをより適した形に育てていくことも重要である。
本書が国の掲げる未来社会像に近づく一助となることを願っている。
<1>バイオ液体燃料の持続的な生産・利用システムの構築に向けて
1.はじめに
2.バイオ液体燃料の全体像と現状把握
3.ブラジルの事例に見る:バイオ液体燃料の持続的な生産・利用システム
4.日本におけるバイオ液体燃料の持続的な生産・利用システムとは
5.おわりに
<2>バイオ燃料
1.バイオ燃料の種類、課題と世界動向
・概要と全体動向
・バイオエタノール
・バイオディーゼル
・持続可能な航空燃料:SAF
・微細藻類生成の油脂
・バイオガス
2.バイオ燃料の最新動向とその導入の道筋
・我国のバイオ液体燃料の現状
・バイオ燃料の最新動向と導入の道筋
・環境価値の移転
3.バイオ燃料の有効利用
・地球温暖化の原因
・地球温暖化の対応策
・バイオ燃料の利用形態
・液体バイオ燃料
・バイオ燃料の利用例
・バイオ燃料の有効利用の研究例
<3>バイオエタノール
1.バイオエタノールの概要と事業性、課題
・バイオエタノールの概要
・事業性と課題
・まとめ
2.バイオマス利用のエタノール製造技術と課題
・バイオマス利用のエタノールの製造の工程
・セルロース系エタノール製造の個別技術
・セルロース系エタノール製造関連技術の動向
3.米国・世界のバイオエタノールの現状と日本での利用への期待
・原料から見たバイオエタノール
・バイオエタノール生産とその歴史
・日本の燃料バイオエタノール政策
・世界と米国のバイオエタノールの現状
・米国のバイオエタノールの将来
・米国のバイオエタノール生産者の日本市場への期待
4.バイオエタノール導入時の問題点と対策
・バイオエタノールの導入
・ガソリン代替燃料としての必要条件
・ETBE方式によるバイオエタノールの導入
・バイオエタノール直接混合時の問題点
5.木質系バイオマスを原料に利用した
バイオエタノール・バイオイソブタノールの発酵生産
・木質系バイオマスの前処理
・バイオ燃料の生産
6.日鉄エンジニアリング(株)のセルロース系バイオエタノール製造技術
・日鉄エンジニアリングのセルロース系バイオエタノール製造技術
・セルロース系バイオエタノールの普及・発展に向けた取り組み
・セルロース系バイオエタノールの国内製造による
ネガティブエミッションへの期待
7.選択的発酵酵母を利用した低炭素食料増産型バイオエタノール生産
・食料とエネルギーをめぐる新たな課題
・多収性サトウキビの開発とその課題
・選択的発酵酵母の利用
・逆転生産プロセス-食料と燃料を同時に
・一石三鳥の効果-食料・エネルギー・低炭素化
・パラダイムシフトとしての意義
<4>バイオディーゼル
1.バイオディーゼルとバイオエタノールの
廃棄物フリーを目指した並行製造
・供試木材の選定とグリセリンを用いた脱リグニン方法
・種々の木材における脱リグニン挙動
・グリセリン画分の特性
・脱リグニン処理後の木粉の酵素糖化によるバイオエタノール原料の製造
・関連研究の紹介
・まとめと今後の展望
2.高品位バイオディーゼル燃料の製造技術-HiBDプロセスの開発
・HiBD(R)プロセス
・実用化
・HiBDプロセスの実用化
・HiBDおよびHiBDプロセスの課題と展望
3.バイオディーゼル燃料の原料、製造法と実用化に向けた課題
・多様な原料植物油
・水酸化アルカリを用いる一般的な製法
・普及の拡大に向けた課題
4.バイオディーゼル原料のフレキシビリティに寄与するプロセス技術の進展
・酵素を用いるバイオディーゼル製造プロセス
・酵素法の実装事例
・新型酵素反応器の開発事例
5.多様な再生可能資源による持続可能燃料製造技術と将来の展望
・バイオディーゼル燃料「C-FUEL」
・次世代バイオ燃料「SAF」とは
・廃食用油を原料としたSAF製造
・原料の拡大「ジャトロファ」
・木質バイオマス、高分子樹脂を燃料にしたSAF製造
6.微細藻類によるバイオ燃料生産
・バイオ燃料生産に期待される微細藻類の種類とその特徴
・併産が期待される有用物質
・遺伝子改変技術とそれによる主な成果
7.バイオディーゼルの低温流動性
・低温流動性とは
・低温流動性の予測モデル
・モノアシルグリセロールの影響
8.バイオディーゼルの酸化劣化挙動
・脂質の自動酸化
・バイオディーゼルの酸化安定性
・バイオディーゼル・軽油混合燃料の酸化劣化挙動
<5>航空燃料
1.SAFの導入の背景と製造技術の概要
・SAF導入の背景
・燃料規格(ASTM D7566 及びASTM D1655)
・CORSIA適格燃料
・SAF製造技術の概要と動向
・原料調達
2.バイオマス原料SAFの製造技術
・バイオマス原料
・油脂(廃食油)原料
・バイオアルコール原料
・バイオガスのガス化合成ガス
・国内の動向
3.第二世代バイオエタノールを原料としたSAF生産
・SAFの製造技術と供給予想
・ATJ技術によるSAF製造と国内における事業化に向けた動向
・ATJによるSAF製造について
4.微細藻類由来バイオジェット燃料の現状と課題
・微細藻類の世界市場
・独立栄養vs従属栄養
・有機炭素基質と葉緑体の代謝
・独立栄養培養、従属栄養培養、混合栄養培養
・従属栄養培養による脂質合成と蓄積
・環境フットプリント
5.微細藻類SAFの産業化に向けたIMAT基盤技術研究所の取り組み
・標準化への取り組み
・ライフサイクルアセスメントと技術経済性分析による多角的な評価
6.バイオマスからのジェット燃料製造
・実験
・結果および考察
<6>その他燃料
1.バイオガスからバイオメタノール・バイオギ酸合成
・メタンをメタノールへ選択変換する技術
・二酸化塩素の光活性化
・フルオラス溶媒/水の二層反応系
・酪農業への実装化検討
・反応のスケールアップ
・カーボンニュートラル循環型酪農システム
・メタンを取り巻く国際動向
2.微生物によるメタノール合成
・メタノールの燃料利用とその製造の現状
・メタンを原料としたメタノール合成
・二酸化炭素を原料としたメタノール合成
・ギ酸からのメタノール生成
・ペクチンからのメタノール生成
・今後の展望
3.ブタノールのバイオ生産とバイオ燃料としての現状
・ブタノールの物性と液体燃料への適合性
・ブタノールの代替燃料としての利用状況
・イソブタノールのバイオ生産
・n-ブタノールのバイオ生産
・セルフリー反応によるブタノール生産
・バイオブタノールの高生産化
・バイオブタノールの今後の展望
4.ソルガム残渣からのバイオブタノール製造
・ソルガムについて
・バイオものづくりについて
・日本のバイオエタノール政策
・バイオブタノール製造
■監修■
北川 尚美
東北大学