SSK 株式会社 新社会システム総合研究所

最新の熱設計・熱対策手法

-冷却デバイス・放熱材料・シミュレーション-

商品No.
R02V1104
出版月
2025年 7月
価格

印刷タイプ 77,000円 (税込)

ページ数
B5判 326ページ
発行<調査・編集>(株)シーエムシー出版
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レポート内容
■ポイント■
 ・AI技術の急速な普及やクルマの電動化を背景に、製品の信頼性を高める技術=「熱設計」の存在意義がさらに高まっている!
 ・冷却デバイスや放熱材料、熱設計の各種プロセス、製品事例、熱流体シミュレーション、計測法を詳述!
 ・電子機器の“熱”にお困りの方々にとってヒントが詰まった一冊!

■概要■
 エレクトロニクスの熱問題は、最初の真空管コンピュータの発明以来、現在まで続いている。
 以前より、熱設計は製品の信頼性を高める重要な技術であり、熱設計を怠ると温度が高くなり部品が故障しやすくなると言われてきた。これは現在に至るまで変わらない。しかし、この数十年で熱設計のありかた、存在意義は大きく変わってきた。
 ムーアの法則に従って半導体の集積度が上がり、その性能は飛躍的に向上した。しかし、これをスマホのような小さい筐体に入れると温度によって制限され、100%の性能を発揮できなくなる。同じチップを使っても他社より冷却能力が高ければその分性能を引き出すことができる。つまり冷却技術が製品の性能に直結するようになってきた。
 電動化が進むカーエレクトロニクス分野では「熱を制するはEV 制す」(デンソー)と言われるほど重要な技術になっている。バッテリーの
加熱冷却にエネルギーを使うと走行距離が短くなってしまうため、温度管理に使用するエネルギーを最小化する「サーマルマネジメント」が不可欠な技術になっている。
 コンピュータ機器ではAI 技術の急激な普及により、データセンター、サーバーの消費電力が問題になってきた。経産省はデータセンターにPUE(施設全体の消費電力をサーバーなどのIT機器の消費電力で割った値)を1.4 以下にする目標を課し、いかに冷却に使用する電力を低減するかが最大の課題となっている。このように「機器の発熱処理」は、機器信頼性の問題だけでなく、もはや社会問題にすらなっているといって過言ではない。
 一方、放熱、冷却技術の進展は半導体や車の進歩に比べ、遅々としている。デバイスの消費電力増大と小型化(冷却能力低下)に対して、いまだに扇風機とヒートシンクが冷却の主体である。物理現象としての「伝熱」は普遍的なメカニズムであり、突飛な方式は考えにくい。もし画期的な方法があったとしても、コストがかかってしまったら広く普及することはない。
 冷却技術に大きなステップアップは少ないが、その基盤は着実に進歩している。TIM やヒートスプレッダを中心とした高放熱材料、ヒートパイプ、ベーパーチャンバーなどの相変化デバイス、冷却ファンやヒートシンクの小型高性能化など、またこれらを組み合わせた熱設計技術、熱流体シミュレーション利用技術など、日々更新されている。
 これらをキャッチアップして製品開発に採り入れない限り、世の中に遅れをとってしまうことになりかねない。
 本書はこのような背景の下、以下の3 つに分類して最新動向を専門家にご執筆頂いた。
【第Ⅰ編最新の熱設計と熱対策】
 熱対策に使用する放熱材料や冷却デバイスの最新情報、各社で取り組まれる熱設計プロセスや設計手順、最近重要度が増している基板熱設計について、詳述している。
【第Ⅱ編製品における熱設計・熱対策手法】
 話題のEV や車載機器、サーバーやPV などのICT機器をピックアップして最新の動向について解説して頂いた。
【第Ⅲ編シミュレーションと計測技術】
 今や熱設計に不可欠のツールとなった熱流体シミュレーションの最新動向と部品の小型化で難しくなった温度測定などについて最新動向を詳しく説明頂いた。
 本書は、厳しい熱設計要件に直面され冷却手段を検討されている方、熱設計手法やプロセスの変革を推進されている方、シミュレーションの活用や熱特性計測の導入を考えられている方、もちろん熱設計・熱対策の最新状況を知りたい方、電子機器の熱に関わる多くの皆様にとって有効なヒントが与えられるものと確信している。
-CONTENTS-
【総論】
1.ネットワーク社会の進展でますます厳しくなる熱問題
2.新技術を牽引するキーデバイスと熱
3.熱による不具合の変化
4.半導体や実装技術の進歩と熱設計の変化
5.高発熱デバイスの冷却
6.基板放熱型部品の熱対策
7.筐体放熱型機器

【第Ⅰ編 最新の熱設計と熱対策】
<1>熱設計手法とプロセス
1.製品開発における熱設計手法
 ・電子機器構造の変化と熱設計
 ・理想的な熱設計プロセスと現実の製品設計プロセス
 ・内部空気放熱型製品と熱伝導放熱型製品の熱設計プロセスの違い
 ・効率のよい熱設計方法
2.デジタルデザインによる熱設計と開発フロントローディング
 ・デジタルデザインによるCAE技術の進化
 ・熱設計フロントローティング推進の取り組み
 ・ヒートパイプのモデル化検討事例

<2>放熱材料による熱対策
1.放熱材料のトレンドと今後の展望
 ・放熱材料の必要性
 ・放熱材料に求められる特性
 ・使用事例からみる放熱材料の必要特性
2.シリコーン放熱グリースの開発
 ・シリコーンの性質
 ・シリコーン放熱グリースの構成と特徴
 ・シリコーン放熱グリースの分類と特性
3.放熱材料の機能と特性EV バッテリーへの適用事例
 ・自動車産業の変革と次世代エネルギー車の台頭
 ・熱マネジメント材料の概要
 ・放熱ギャップフィラーの特徴
 ・次世代エネルギー車における放熱ギャップフィラーの適用事例
4.革新的蓄熱技術と超熱伝導デバイスによるサーマルコントロール
 ・蓄熱技術と蓄熱材料
 ・TIM材としてのPCMカプセル化技術
 ・蓄熱技術のための熱輸送デバイス(ヒートパイプ)
 ・超熱伝導ヒートパイプ
5.高熱伝導放熱シートに求められる技術と製品事例
 ・TIMの構造、及び製品形態
 ・複合材料の高熱伝導化
 ・FUJIPOLYサーコン製品
6.グラフェン放熱塗料の開発
 ・サーマルマネジメントに関する社会的背景
 ・サーマルマネジメントについて
 ・熱移動の三原則
 ・放熱機構
 ・放熱部材の課題
 ・熱放射材の課題
 ・新規熱放射材の設計について
 ・開発の目的
 ・放熱塗料の物性
 ・放熱塗料の内部温度低減効果
 ・放熱塗料の表面温度低減効果
 ・今後の展望

<3>半導体の放熱対策
1.集積回路やパワー半導体の発熱メカニズムおよび熱設計
 ・集積回路やパワー半導体の動作と発熱
 ・集積回路やパワー半導体の熱設計
2.チップレットにおける熱問題とその対策
 ・チップレットの放熱性
 ・チップレットの内部構造
 ・Si インターポーザーと有機インターポーザー
 ・ダミーチップの効果、ガラスコア基板
 ・チップレットの冷却環境
 ・データセンターの冷却性能

<4>プリント基板の放熱対策
1.電子機器のための基板放熱設計
 ・電子機器の小型化と放熱設計の課題
 ・基板放熱設計の指針と対象の選別
 ・基板放熱の具体的事例
 ・多層基板での放熱性の検討(実験結果)
 ・基板放熱の見積もり
2.基板冷却:サーマルビアと内層パターンの伝熱
 ・放熱性の評価方法
 ・サーマルビアの効果
 ・内層パターンの効果
3.FR-4で実現する高放熱基板設計の構造的アプローチ
 ・高放熱基板の種類と特徴
 ・厚銅箔基板による放熱
 ・銅インレイ基板による放熱

<5>冷却デバイス
1.超薄型ループヒートパイプの研究開発
 ・モバイル機器の冷却手法
 ・ループヒートパイプの原理
 ・薄型LHPの研究開発動向
 ・厚さ0.3 mmUTLHPの開発と評価
2.ペルチェ素子の新熱等価回路および自己発熱を低減し効率向上した冷却技術
 ・ペルチェ素子における熱電冷却および熱電発電の動作
 ・ペルチェ素子の新しい熱等価回路
 ・ペルチェ素子の自己発熱の低減により冷却効率を大幅に向上する駆動方法
 ・冷却効率の向上効果の確認実験
 ・冷却効率の解析
 ・冷却効率の向上を確認する実験の結果
3.超薄型ベイパーチャンバー用ウィックの商品開発と事業展開
 ・超薄型ベイパーチャンバー用ウィックの商品開発
 ・超薄型ベイパーチャンバーの事業化

【第Ⅱ編 製品における熱設計・熱対策手法】
<1>車載機器
1.EV/HEVにおける熱対策事例
 ・車両の電動化とクルマの付加価値向上
 ・付加価値向上を実現する実装技術
 ・パワーエレクトロニクス製品の熱対策
2.電子制御の時間変化に同期した高精度な熱抵抗・熱容量の半導体モデル
 ・DXRCモデルおよびDNRCモデルとDSRCモデル
 ・DXRCモデル
 ・DNRCモデル
 ・DSRCモデル
 ・モデルの活用例
 ・過渡伝熱評価の実験から過渡熱応答のモデルを利用したジャンクション温度測定へ
3.機電一体型・電動ポンプECUの熱設計とシミュレーション
 ・機電一体型ECUの熱設計
 ・熱シミュレーションの技術開発
 ・機電一体の熱シミュレーションの技術開発
 ・技術運用と成績
4.車載用LED照明の熱設計
 ・車載用照明における熱設計の必要性
 ・ヘッドランプの熱設計プロセス
 ・車載用LEDヘッドランプの熱設計

<2>情報・通信機器
1.スマートフォンの熱対策動向
 ・スマートフォン内部の発熱デバイス
 ・スマートフォン内部の熱移動経路
2.冷却ファンモータの最新技術動向と実装技術
 ・緒論
 ・冷却ファンモータの最新技術動向
 ・冷却ファンモータの実装技術

【第Ⅲ編 シミュレーションと計測技術】
<1>最新のシミュレーション技術
1.デバイスモデルの潮流実測によるモデル較正と低次元化モデル(ROM)
 ・様々なデバイスモデル
 ・半導体パッケージモデルの歴史
 ・熱抵抗モデルと熱回路網モデル
 ・2抵抗モデル
 ・DELPHIモデル
 ・従来の熱抵抗モデルの問題点と様々な半導体パッケージ熱モデル
 ・過渡熱測定データを用いた熱回路網モデル
 ・過渡熱測定データで詳細モデルを較正する
 ・低次元化モデル(ROM)
 ・境界条件に依存しない低次元化モデル(BCI-ROM)
 ・組込み型の低次元化モデル(EROM)
2.スマートフォンの熱設計プロセスとシミュレーションの活用
 ・日本における携帯電話の消費電力変遷
 ・スマートフォンの製品開発プロセスとその課題
 ・スマートフォンの熱設計の問題点
 ・スマートフォン熱設計プロセスの改善例
 ・スマートフォンのこれから
3.パワーエレクトロニクスシステムにおける損失と熱のシミュレーション
 ・パワーエレクトロニクスにおける損失
 ・パワーエレクトロニクスにおける熱
4.電子機器の熱流体シミュレーションにおける最適化技術
 ・電子機器の設計開発における熱流体シミュレーションの活用
 ・熱流体シミュレーションにおけるモデリングと精度
 ・最適化事例1:ICのモデリング
 ・最適化事例2:ヒートパイプの熱伝導率の推定
 ・最適化事例3:発熱量の推定
5.AI を活用した基板熱設計ツール
 ・ツール構築の背景
 ・ツールの概要
 ・AIを活用したサロゲートモデルの開発
 ・精度向上
6.アルミ電解コンデンサの電気・熱マルチドメインモデル検討(1DCAE)
 ・アルミ電解コンデンサと車載電装機器
 ・アルミ電解コンデンサの電気モデル
 ・アルミ電解コンデンサの熱回路モデル
 ・アルミ電解コンデンサのマルチドメインモデル
 ・システムシミュレーションへの実装例

<2>計測・評価技術
1.小形部品の温度管理方法(表面実装抵抗器の端子部温度規定国際規格化)
 ・実装方法の変遷に伴う放熱経路の変化
 ・リード線形抵抗器と表面実装抵抗器に適した温度管理部位
 ・端子部温度規定が必須になった理由
 ・表面実装抵抗器の国際規格への端子部温度規定の適用方法
2.小形部品の温度測定(熱電対と赤外線サーモグラフ)
 ・部品が小形になると温度測定が困難になる例
 ・熱電対編
 ・赤外線サーモグラフ編

■監修■
国峯 尚樹
(株)サーマルデザインラボ
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