SSK 株式会社 新社会システム総合研究所

深共晶溶媒の開発と応用

商品No.
R02V1103
出版月
2025年 7月
価格

印刷タイプ 69,300円 (税込)

ページ数
B5判 216ページ
発行<調査・編集>(株)シーエムシー出版
備 考
申込フォーム
お問合せ
レポート内容
■ポイント■
 ・環境調和型溶媒として注目される深共晶溶媒(DES)の基礎から応用までを網羅。
 ・レアメタル抽出、機能性材料合成、バイオ・ライフサイエンスへの最新応用事例を詳述。
 ・次世代のサステナブル技術を牽引するDES研究開発の最前線を体系的に解説。

■概要■
 持続可能な社会の実現に向け、環境負荷の低い化学物質が求められる中、深共晶溶媒(DES)が注目を集めている。DESは、水素結合を形成する2種類以上の化合物を混合することで、単体成分より大幅に融点が低下し、室温付近で液体となる混合物である。イオン液体とは異なり、電荷を持たない化合物も利用可能で、環境親和性が高く、低毒性であることが特徴である。また、優れた熱安定性、調整の容易さ、低コスト、低い蒸気圧、生分解性、不燃性など多くの利点を持ち、従来の有機溶媒やイオン液体に代わる環境に優しい溶媒として有望視される。
 DESの研究はまだ始まったばかりで、その革新的な特性は、触媒、分離、電気化学、さらにはバイオ・ライフサイエンスといった多岐にわたる分野での応用が見込まれている。特に、常温常圧で固体を液体として扱える点は、新たな技術革新をもたらす可能性を秘めている。
今後、DESが基礎科学の理解を深め、応用分野の開拓につながることで、環境に優しい新たな科学の世界が実現することが期待される。
-CONTENTS-
【第1編:深共晶溶媒の基礎】
<1>深共晶溶媒の基礎と物性
1.深共晶溶媒の基礎
2.DESの物性
3.小括

【第2編:抽出溶媒としての深共晶溶媒】
<2>深共晶溶媒を用いた自動車排ガス触媒からの白金族金属回収
1.はじめに
 ・白金族金属とは
 ・自動車触媒とは
 ・自動車触媒の今後の需要
 ・従来の廃自動車触媒からの白金族金属のリサイクル技術
2.深共晶溶媒を用いた廃自動車触媒のリサイクル技術
3.疎水性深共晶溶媒を浸出溶媒として用いた廃自動車触媒からの白金族金属のリサイクルプロセス
 ・疎水性深共晶溶媒を用いたリサイクルプロセスの戦略
 ・本研究に用いる廃自動車触媒の分析
 ・さまざまな深共晶溶媒の開発と検討
 ・従来法と新規法の比較
 ・疎水性深共晶溶媒からの金属分離
 ・疎水性深共晶溶媒の繰り返し利用
4.結言

<3>疎水性深共晶溶媒を用いた液液・固液抽出に基づくレアメタル分離技術の開発
1.はじめに
2.疎水性DESを用いたリチウムイオン電池(LiB)リサイクル技術の開発
3.希土類金属の選択的回収に向けた疎水性深共晶溶媒の応用
4.小括

<4>深共晶溶媒によるレアアースおよび貴金属の選択的抽出分離
1.はじめに
2.実験
 ・金属イオンの抽出試験
 ・複素環式窒素化合物である新規抽出剤の合成
3.結果および考察
 ・イソステアリン酸,トリオクチルホスフィンオキシド(TOPO)またはDESによるSc/Y/Al/Fe の抽出
 ・イソステアリン酸およびTOPO(単一系)によるSc(Ⅲ)の抽出平衡
 ・DES によるSc(Ⅲ)の抽出平衡
 ・アミン系抽出剤による貴金属イオンの抽出選択性
 ・1-ブチルイミダゾールによる貴金属イオンの抽出に対する抽出剤濃度,抽出時間および水相/ 有機相体積比の影響
 ・1-ブチルイミダゾールと4-n-オクチルアニリンとの混合抽出剤による貴金属イオンの選択的分離
4.おわりに

<5>天然深共晶溶媒を用いたリチウムイオン電池(ブラックマス)からのレアメタルのリサイクル技術
1.はじめに
2.ブラックマスの化学組成
3.深共晶溶媒とは
4.深共晶溶媒によるコバルト酸リチウム、ブラックマスからのコバルト抽出
5.ブラックマスから直接作成する再生型リチウムイオン電池の開発

<6>クラウンエーテル系深共晶溶媒による希土類金属の抽出分離
1.はじめに
2.深共晶溶媒におけるクラウンエーテルの利用
3.クラウンエーテルからなる疎水性深共晶溶媒の創製
4.クラウンエーテルからなる疎水性深共晶溶媒による希土類金属の抽出分離
 ・深共晶溶媒への希土類金属の抽出
 ・デカン酸/クラウンエーテル(1:1)深共晶溶媒系における希土類金属の抽出挙動
 ・デカン酸/クラウンエーテル(2:1)深共晶溶媒系における希土類金属の抽出挙動
 ・2-テノイルトリフルオロアセトン/クラウンエーテル(2:1)深共晶溶媒系における希土類金属の抽出挙動
 ・深共晶溶媒系における希土類金属の抽出メカニズム
5.おわりに

<7>深共晶溶媒による天然物中のファイトケミカルの抽出
1.はじめに
2.深共晶溶媒を用いた玉ねぎ果皮に含まれるクェルセチンの抽出と溶媒の含水率の影響
3.HDESを用いたニンジンに含まれるb-カロテンおよびカニ殻に含まれるアスタキサンチンの抽出と極性パラメータによる抽出挙動の解析
4 まとめ

<8>深共晶溶媒を用いた液膜透過
1.はじめに
2.液膜の安定化への取り組み
3.DESを用いたSLM
4.DESを用いたPIM
5.おわりに

<9>深共晶溶媒を用いた生物活性天然有機化合物の抽出
1.はじめに
2.深共晶溶媒の調製
3.揮発性天然有機化合物の抽出
4.非揮発性天然有機化合物の抽出
5.おわりに

【第3編:深共晶溶媒の機能性材料設計と合成応用】
<10>高い電気伝導性を有する有機ヨウ化物塩とヨウ素をベースとした深共晶溶媒
1.はじめに
2.有機ヨウ化物塩とヨウ素の混合物
3.電気伝導率
4.高電気伝導性のメカニズム
5.まとめ

<11>常圧において酸性/ 塩基性ガスの溶解度が高い深共晶溶媒の分子デザイン
1.はじめに
2.酸性ガスの吸収
3.塩基性ガスの吸収
4.おわりに

<12>トリフルオロアセトアミド類からなる共晶溶媒の物理化学特性とリチウムイオン電池への応用
1.緒言
2.溶液物性
3.溶存状態解析
4.電気化学安定性とリチウムイオン電池への応用
5.結言

<13>電気化学的フッ素化用電解液としてのフッ化物系深共晶溶媒の開発
1.フッ化物系深共晶溶媒の開発指針
2.フッ化物塩とアルコール水素結合供与体から成るフッ化物系深共晶溶媒の調製
3.フッ化物塩とアミド水素結合供与体から成るフッ化物系深共晶溶媒の調製
4.結言

<14>コリン系深共晶溶媒を用いる糖類からの5-ヒドロキシメチルフルフラールの合成
1.はじめに
2.5-ヒドロキシメチルフルフラール
3.フルクトースからの合成
4.グルコースからの合成
5.セルロースからの合成
6.おわりに

<15>深共晶溶媒を用いたキチンのアシル化手法の開発と熱可塑性混合キチンエステル合成への展開
1.はじめに
2.DESによるキチンの溶解
3.AMIMCl系DES溶液中でのキチンのアシル化反応の開発
4.AMIMCl/TMG系DES溶液中での混合キチンエステルの合成と熱可塑性発現
5.おわりに

<16>イオン伝導性ポリマーの低環境負荷な製造に向けた金属塩/アミド系深共晶モノマーの設計
1.はじめに
2.深共晶電解質(DEE)の特徴と機能
3.深共晶モノマー(DEM)の種類と特徴
4.金属塩/アミド系DEMのラジカル重合によるイオン伝導性ポリマーの創製
5.おわりに

<17>DESを利用した樹脂添加剤の開発
1.背景
2.抗菌性樹脂添加剤の課題
3.深共晶溶媒の抗菌性樹脂添加剤への応用
4.KRIで開発した抗菌性樹脂添加剤の作製方法と特徴
 ・新規樹脂添加剤の作製
 ・ポリエチレン樹脂混合物の作製
 ・抗菌特性の評価
 ・SEM観察による分散性の評価
 ・耐熱性の評価
5.総括
6.おわりに

<18>深共晶溶媒を用いた電解析出法による高強度・高延性合金の作製
1.はじめに
2.ジメチルスルホン浴を用いたアルミニウム電析
3.ジメチルスルホン浴を用いた電析アルミニウムの高延性化
4.おわりに

<19>深共晶溶媒を用いためっき浴から作製した軟磁性めっき膜に与える浴添加剤の影響
1.はじめに
2.軟磁性材料の基礎
3.深共晶溶媒を用いた軟磁性膜創製
4.浴添加剤の効果
 ・ホウ酸
 ・グリシン
5.おわりに

【第4編:深共晶溶媒のバイオ・ライフサイエンス分野への応用】
<20>深共晶溶媒を用いた希少な二糖の生成
1.はじめに
2.グルコース
3.グルコースからなる深共晶溶媒
4.化学反応媒体としてのコリンクロリド/グルコース深共晶溶媒
5.希少な二糖
6.まとめと今後の展望

<21>DESによるセルロース溶解とバイオマス前処理
1.セルロース系バイオマス
2.セルロースの難溶性と溶媒
3.セルロース溶解のためのDES
4.バイオマスの前処理とリグニン分離のためのDES
5.結論と今後の課題

<22* > *深共晶溶媒を用いた医薬品原薬の多成分結晶化
1.はじめに
2.医薬品開発におけるDES
3.DES を用いたAPI の多成分結晶化
4.おわりに

<23>経皮デリバリーのための深共晶溶媒
1.はじめに
2.経皮吸収を高めるDESの有用性
3.DESを角層に適用したときの角層成分の構造変化と皮膚浸透促進作用
4.親水性DESとドラッグキャリアを組み合わせた系
 ・DES内包マイクロエマルション
 ・DESに分散したトランスファーソーム
 ・DESに分散したバイセル
 ・疎水性DESを含む油状基剤に分散したME
5.まとめ

<24>生体分子から構成されるイオン液体、深共晶溶媒の物性比較と機能性食品への応用
1.はじめに
2.医薬品有効成分としてのイオン液体,深共晶溶媒研究
3.機能性食品への応用を目的としたGABA型深共晶溶媒
4.GABA型深共晶溶媒の調製
5.GABA型深共晶溶媒の水素結合評価
6.GABA型イオン液体と深共晶溶媒の物性比較
7.GABA型イオン液体と深共晶溶媒の細胞毒性評価
8.おわりに

<25>深共晶溶媒を用いた抗体断片の経皮的投与方法の開発
1.はじめに
2.深共晶溶媒.Choline and Geranate(CAGE)
 ・CAGEの薬物送達システムへの応用
 ・CAGEの吸収促進作用
3.CAGEを用いた抗体断片Fabの経皮デリバリー
 ・抗体選定と抗体断片Fabの調製
 ・CAGE variant を用いたFab経皮投与後の蛍光顕微鏡観察
4.CAGEを用いた抗体断片の経皮デリバリーにおける変性抑制
 ・DESがタンパク質のコンフォメーションに及ぼす影響
 ・CAGE(1:2)濃度が抗体断片Fabの構造に及ぼす影響
 ・PolysorbatesによるCAGE(1:2)中でのFab変性抑制効果
5.最後に

■監修■
馬場 由成
宮崎大学
申込フォーム
お問合せ