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日本の食糧の安定的供給の確保と食糧需給問題の解決に向けた施策〜厳しい環境下で安定したサプライチェーンを保つために何をすべきか〜
8月31日(水) 終了済
農林水産省 大臣官房 政策課 食料安全保障室 企画官
光廣 政男(みつひろ まさお) 氏
我が国における食料の安定的な供給については、国内の農業生産の増大を図ることを基本とし、これと輸入及び備蓄とを適切に組み合わせることにより確保することとしている。一方、世界の食料需給を見ると、世界人口の増加等により食料需要の増加が見込まれる中、異常気象による大規模な不作の頻発等の食料供給に影響を与える可能性のあるリスクの増大も懸念されている。さらに、新型コロナウイルスの感染拡大に伴うサプライチェーンの混乱に加え、ロシアのウクライナ侵略等により、穀物だけでなく、原油や肥料等の生産資材についても、価格高騰等の安定供給を脅かす事態が生じる等、近年に例を見ないほどの厳しい環境下にある。
本講義では、我が国の食料安全保障と世界の食料需給の基本的な事項について説明した後、最近の情勢及び農林水産省で実施した「食料の安定供給に関するリスク検証」について説明する。
1.我が国の食料安全保障
2.世界の食料需給
3.最近の情勢
4.食料の安定供給に関するリスク検証
5.質疑応答/名刺交換
大阪大学 大学院工学研究科 応用化学専攻・教授
松崎 典弥(まつざき みちや) 氏
代替タンパク市場の急拡大に伴い、培養肉への期待も高まっている。シンガポールではすでに製造・販売が始まっており、各国も追随する動きがある。将来の代替肉として植物肉、ハイブリッド、培養肉、構造化培養肉など様々な種類が報告されている。
本講義では、培養肉を作製する技術と将来展望について述べる。
1.代替肉の現状と課題について
2.代替肉の種類と作製方法について
3.組織工学技術について
4.高精細培養肉の作製方法について
5.培養肉技術の将来展望
6.質疑応答/名刺交換
株式会社資源・食糧問題研究所 代表
柴田 明夫(しばた あきお) 氏
世界の食料市場では2020年以降、新型コロナ禍に加え、バッタの大発生による蝗害、世界各地での干ばつや森林火災、洪水-などが相次ぎ、複合的な食料危機の様相を呈している。ここにロシアのウクライナ侵攻という地政学リスクが加わった。その影響は、穀物価格の暴騰によるアフリカやアジアなど発展途上国での飢餓急増に止まらず、食料輸入国では供給不足から社会不安が高まり、暴動や内戦のリスクが燻り始めた。欧米諸国の対ロシア経済制裁の強化により、世界的なエネルギーの供給不足懸念が広がっているのに加え、ロシアは、中国と連携する形で、保有する肥料原料や鉱物などクリティカル(重要)資源を戦略的に利用しようとの思惑も見え隠れする。グローバル化の下で、極限まで農業を外部化してきたわが国は、国内の農業資源(人、農地、水、水源涵養林、地域社会)をフル活用し、食糧生産を最大限拡大する方向へと農政の舵を切り変えるべきであろう。
1.資源・食料(食糧)の安全保障とは
2.シカゴ穀物価格はロシアのウクライナ侵攻を受け急騰
3.あらゆる食料品価格が高騰(アグフレーションの再来)、背景に供給制約
4.過熱する市場の「冷却装置」の筈だったウクライナ産小麦・トウモロコシ
5.人口爆発する中東・北アフリカは食糧輸入も急増
6.ウクライナ危機の影響-懸念される「アラブの春」再来
7.クリティカル(重要)資源の決済通貨として「人民元」が存在感を強める
8.戦争の影響は肥料原料(チッソ、リン酸、カリ)にも
9.2008年以降、一段と不安定化する世界の食糧市場
10.世界食糧生産は記録的増産が続いた後、5年ぶりの減産へ
11.極めて楽観的な米農務省の生産予想とジワリと広がる高温乾燥天候
12.米国で拡大するトウモロコシのエタノール向け需要
13.中国の食糧生産6億8000万トン強でも不安が拭えず
14.2008年の食糧価格高騰を受けて、中国は食糧安全戦略を構築
15.世界最大のトウモロコシ輸入国に躍り出た中国
16.中国のロシア産小麦輸入拡大-したたかな「一帯一路」構想
17.世界穀物在庫の過半を占める中国-その戦略的意図は
18.コロナ禍の世界食糧市場、根本原因としての異常気象(IPCC特別報告書)
19.2030年の世界食糧需給展
20.日本が追求してきた「価格」「品質」「供給」の3つの安定が保障されなくなった
21.浮き彫りになったわが国のフードシステムの脆弱性
22.日本の食料安全保障は大丈夫か-国内生産拡大を基本に輸入と備蓄を組み合わせる
23.弱体化が止まらない日本農業
24.農業の6次産業化と複合経営-農業ICTをどう評価するか
25.「食料」生産の拡大に向け、1999年基本法の抜本的見直しを
26.質疑応答/名刺交換
2007年4月 農林水産省入省。
2015年2月〜2018年3月 外務省出向(在ブラジル日本国大使館へ)。
2021年4月より現職(大臣官房政策課食料安全保障室 企画官(食料安全保障対策担当))。
鹿児島県生まれ。
2003年に鹿児島大学で博士号を取得。
2003年より大阪大学にてポスドクとして研究活動を開始。
2004年ルンド大学の客員研究員。
2006年大阪大学大学院工学研究科応用化学専攻に助教として着任。2015年准教授、2019年教授に昇任。
2008年から2011年、2015年から2019年までJSTさきがけ研究員(兼務)。
文部科学大臣表彰若手科学者賞など18の賞を受賞。
170本以上の論文を発表し、h-indexは41。
研究テーマは、再生医療や医薬品への応用を目的としたバイオマテリアルと組織工学。
1951年栃木県生まれ。
1976年東京大学農学部卒業後、丸紅に入社。
鉄鋼第一本部、調査部を経て、2001年業務部経済研究所産業調査チーム長、
2006年丸紅経済研究所所長、2010年より代表。
2011年10月、株式会社資源・食糧問題研究所を設立し代表に就任。
主な著書に、「資源インフレ」「食糧争奪」「水資源」「食糧クライシス」「扼殺される日本の農業」など多数。