SSK 株式会社 新社会システム総合研究所

計算科学を活用した熱電変換材料の研究開発動向

商品No.
R06B0094
出版月
2022年 4月
価格

印刷+CD-Rタイプ 110,000円 (税込)
印刷タイプ 99,000円 (税込)

ページ数
A4判 214ページ
発行<調査・編集>(株)シーエムシー・リサーチ
備 考
申込フォーム
お問合せ
レポート内容
■ポイント■
 ・IoTセンサーの自立電源、カーボンニュートラルに貢献する廃熱発電などへの利用で社会的な要請が高まっている熱電変換材料!
 ・熱電変換材料の最新研究開発動向全般を俯瞰し説明!
 ・計算科学を用いての材料科学研究の第一人者・気鋭の若手による執筆!
 ・熱電材料の研究事例により、具体的計算科学手法の使い分けを学ぶ!

■概要■
 『計算科学を活用した熱電変換材料の研究開発動向』の「刊行にあたって」を書かせて頂く。
 身の回りにあふれている「熱」を有用な「電気」に変換する熱電材料の200年の歴史を変え得るブレークスルーが起きつつある。1820年頃にゼーベック氏に発見されたゼーベック効果は、材料にかけた温度差によって電圧が発生するものであるが、コンパクトに固体素子で電気を作り出せる利便性にかかわらず、熱電材料の変換能力不足などにより、現在までに広範囲実用化に至っていない。しかし、最近、無数のIoTセンサーを駆動するための自立電源や、カーボンニュートラルに貢献できる廃熱発電としての社会的な要請が非常に高まっており、新規な高性能材料や高性能化原理の開発、モジュールの要素技術の開発、温度管理技術の開発、などが進んでおり、広く実装される日が近づいていると考えられる。
 上記の中で、熱電変換能力を決定する熱電性能指数の向上はやはり至上命題である。パラドックス的な物性の要請に応えるために、最高の材料制御の科学技術が要求される。フォノンを選択散乱する方法、また、通常電気伝導とトレードオフの関係にあるゼーベック係数すなわちパワーファクターの増強方法、の双方の開発が必要である。いずれに関しても、例えば、前者は、フォノンや格子に関する計算や、熱伝達に関する計算、後者は、線形応答理論などの種々の相関に関する理論的な描像や、電子状態、バンド構造に関する計算など、理論的な知見がますます重要になっており、高性能熱電材料の開発に欠かせないものになっている。
なお、当該書籍では計算科学の次の分野での第一人者および気鋭の若手の先生方にご寄稿をお願いした(敬称略)。
 ・第一原理計算:
  <1>臼井 秀知(島根大学 助教)、黒木 和彦(大阪大学 教授)
  <2>宮田 全展(北陸先端科学技術大学院大学 助教)
 ・非平衡輸送理論:
  <1>松浦 弘泰(東京大学 助教)、小形 正男(東京大学 教授)
  <2>山本 貴博(東京理科大学 教授)
 ・格子動力学計算:
  <1>只野 央将(物質・材料研究機構)
 ・分子動力学シミュレーション:
  <1>吉矢 真人(大阪大学 教授)、
  <2>下野 昌人(物質・材料研究機構)
 ・モンテカルロシミュレーション:
  <1>堀 琢磨(東京農工大学准 教授)
  <2>大西 正人(東京大学特任 助教)
 ・連続体シミュレーション:
  <1>黒川 裕之(東京理科大学 研究員)、
     飯田 努(東京理科大学 教授)、他
 ・マテリアルズ・インフォマティクス:
  <1>藤井 進(大阪大学 助教)
 本著は、計算科学を活用した熱電変換材料の研究開発の基礎、基盤技術から最先端の技術や動向を集約することによって、新規な高性能熱電材料の開発の加速に貢献することを目指している。
読者の研究開発に少しでも寄与できれば幸いである。

■監修■
森 孝雄
物質・材料研究機構 国際ナノアーキテクトニクス
研究拠点(WPI-MANA)副拠点長&
MANA 主任研究者&グループリーダー/筑波大学連携大学院 教授
塩見 淳一郎
東京大学大学院 工学研究科 機械工学専攻 教授
-CONTENTS-
【第Ⅰ編 熱電変換材料の最新研究動向】
<1>熱電変換材料の最新研究動向概要
1.導入
2.熱伝導率を選択的に低減する作戦
 ・マテリアルズインフォマティクスを活用した低熱伝導率材料の探索例
 ・複合アニオンによる不均一な化学結合による熱伝導率低減効果
 ・動的な電荷移動による大きな熱伝導異方性効果
 ・ドーピングによる化学結合の軟化による熱伝導率低減効果
 ・原子間サイトへのドーピングによる熱伝導率低減効果
 ・欠陥制御
3.パワーファクター(ゼーベック効果)を増強する作戦
 ・界面制御による高電荷易動度
 ・欠陥制御
 ・磁性によるゼーベック係数の増強
4.まとめ

【第Ⅱ編 第一原理計算】
<1>バレー縮重度とバンド異方性を同時に考慮した熱電性能の指標:122系ジントル相化合物を例に
1.はじめに
2.122系ジントル相化合物の熱電性能
3.122系ジントル相化合物の熱電特性の計算結果
4.122系ジントル相化合物の結晶構造とバンド構造
5.バンド縮重度と熱電性能の関係
 ・ホールドープ領域
 ・電子ドープ領域
6.バレー縮重度とバンド構造の異方性を組み合わせた熱電設計指針
7.おわりに

<2>第一原理電子・フォノン計算と実験を活用したリン化物熱電材料の創製
1.はじめに
2.第一原理計算コードOpenMXを活用した電子・フォノン輸送計算
3.P鎖状構造を有するリン化物Ag3SnP7におけるAgの非調和振動と第一原理電子・フォノン計算
 ・実験によるAg3SnP7の多結晶合成と格子熱伝導率
 ・第一原理計算によるAg3SnP7の電子・フォノン物性
4.まとめ

【第Ⅲ編 非平衡輸送理論】
<1>熱電理論における微視的理論の方法:フォノンドラッグ効果を中心に
1.はじめに
2.ボルツマン方程式から得られるSB関係式とその適用限界
3.SB関係式の成立条件:Kubo-Luttingerの線形応答理論に基づく熱電理論
4.SB関係式が成立する範囲内での熱電効果
 ・ノーダルライン半金属での表面状態に由来した熱電効果
5.SB関係式が成立しない状況での熱電効果
 ・フォノンドラッグ効果
 ・マグノンドラッグ効果
 ・電子格子相互作用の効果や電子間相互作用の効果
6.まとめ 参考文献

<2>熱電効果のランダウア理論
1.はじめに
2.電気伝導のランダウア理論
3.低温のコンダクタンスと量子化
4.熱伝導のランダウア理論
5.低温の熱コンダクタンスと量子化
 ・熱コンダクタンスの量子化
 ・ヴィーデマン・フランツの法則
6.熱電効果のランダウア理論
 ・モットの公式
7.熱電効果のランダウア理論の応用:量子ドット

【第Ⅳ編 格子動力学計算】
<1>熱電材料研究に資する第一原理格子動力学
1.はじめに
2.格子動力学法の理論背景
 ・原子間ポテンシャルとそのTaylor展開
 ・フォノン分散(調和近似)
 ・有限温度フォノン分散
 ・格子熱伝導率
 ・フォノン散乱
3.第一原理計算の実際
 ・IFCの第一原理計算
 ・計算のワークフロー
 ・LD法のソフトウェア
4.おわりに 参考文献

【第Ⅴ編 分子動力学シミュレーション】
<1>分子動力学法を用いた熱伝導度評価およびメカニズム解析
1.はじめに
2.熱伝導度計算法としての分子動力学法と格子動力学法の違い
3.分子動力学法の基礎
 ・古典的原子間ポテンシャル
 ・アンサンブルと温度・圧力制御
4.分子動力学法による3種の代表的熱伝導度計算方法
5.摂動分子動力学法による熱伝導度計算とそのメカニズム解析結果
6.おわりに 参考文献

<2>非平衡分子動力学法を用いた熱伝導予測
1.はじめに
2.熱伝導率と熱電特性
3.分子動力学法
 ・分子動力学法の特徴
 ・原子間ポテンシャル
4.非平衡分子動力学法による熱伝導率の予測
 ・分子動力学法による熱伝導率予測
 ・周期境界条件によるバルク特性の予測(アルゴン結晶の場合)
 ・量子効果、欠陥、結晶粒径などを考慮した補正(CuFeS2カルコパイライトの場合)
 ・多層膜など複合材料の予測(TiNi/MgOナノ多層膜の場合)
 ・表面および添加元素の影響(Fe2VAlホイスラー合金の場合)
5.まとめ 参考文献

【第Ⅵ編 モンテカルロシミュレーション】
<1>モンテカルロシミュレーションによるナノ構造化材料の熱伝導解析
1.ナノ構造化熱電変換材料
2.フォノン輸送の解析方法
 ・ボルツマン輸送方程式に基づくフォノンの輸送
 ・モンテカルロ法によるボルツマン輸送方程式の解法
 ・モンテカルロ法から発展した解析方法
3.フォノン輸送解析の具体例
 ・多角形ナノワイヤ
 ・ナノ多結晶体
 ・薄膜ポーラス体
4.まとめと今後の展望

<2>クラスター展開を用いた結晶構造予測
1.多元素系材料
2.クラスレート化合物
3.有限温度における結晶構造
 ・クラスター展開
 ・モンテカルロ法
4.I型クラスレート化合物の型熱電変換特性
 ・有限温度における結晶構造
 ・熱電変換特性
5.まとめ

【第Ⅶ編 連続体シミュレーション】
<1>熱発電デバイスのパラメトリックシミュレーションへ向けた開発
1.はじめに
2.熱電変換デバイスにおける数値解析手法
 ・伝熱解析と熱─電気連成計算の実施環境
 ・多様な熱源に対する熱発電デバイス設計環境の必要性
 ・パラメトリック解析および機械学習/AI化に向けた伝熱解析と熱─電気連成計算
3.熱発電デバイスの数値解析手法
 ・熱発電デバイス構造最適化へのモデル形成とアルゴリズム
 ・FlowDesignerによる伝熱解析とPythonプログラムによる熱─電気連成解析連携
4.熱発電デバイスシミュレーション
 ・計算モデル階層の構造化と構成モデルの主な役割
 ・物理層:伝熱解析、ゼーベック効果計算
 ・熱発電素子モデル層:ペルチェ効果吸発熱、トムソン効果吸発熱、ジュール発熱計算
 ・発電量計算層:発電量予測計算
 ・最適動作検証層:変換効率・発電量最大動作点計算
5.熱インピーダンスマッチングおよび積算発電電力量(Wh)
6.リファレンス熱発電デバイスによるキャリブレーション環境の構築
7.おわりに

【第Ⅷ編 マテリアルズ・インフォマティクス】
<1>結晶粒界における格子熱伝導機構と情報科学的手法による予測・理解
1.はじめに
2.結晶粒界による熱伝導度の低下と熱電性能の向上
3.計算対象と手法について
4.粒界構造の導出と系統的熱伝導解析
5.機械学習による粒界原子の分類と理解
6.局所的な構造の乱れと熱伝導性の相関
7.粒界構造を入力とした熱伝導度の予測
8.熱伝導性を支配する局所配位環境の特定
9.まとめ
申込フォーム
お問合せ