■ポイント■
・多種多様な生理機能をそなえ今も生命研究の最前線に立ち続ける「ヘムタンパク質」研究の大著発刊！
・歴史的な成果を顧みつつ体系的・網羅的に領域を俯瞰！初学者からトップ研究者まで必携。
・錯体化学、生物無機化学、構造生物学、物理科学、植物科学や応用・展開研究なども視野に構成。
【序論 ヘムタンパク質の研究の歴史】
・はじめに
・ヘモグロビン
・Perutzモデル
・タンパク四次構造とMWCモデル
・MWCモデルからTTSモデルへ
・おわりに
【第1編 基礎研究】
＜1＞エネルギー変換に関与するヘムタンパク質
1．シトクロム酸化酵素-この未知なるもの-
・はじめに
・CcOの機能中心の構造
・O2還元機構
・プロトンポンプ機構
・おわりに
2．脱窒反応系：ヘムタンパク質によるN-N結合の再生
・はじめに
・脱 窒
・可溶性NO還元酵素：P450nor
・膜結合型NO還元酵素：NOR
・今後の展望
3．植物のヘム生合成と代謝
・はじめに
・植物のヘム代謝系
・ヘム代謝系酵素の機能と局在性
・クロロフィルとヘムの合成制御
・シグナルとしてのヘムの機能
・植物に特徴的なヘムタンパク質
・おわりに
＜2＞物質輸送・物質変換に関与するヘムタンパク質
1．真核生物に見られる短縮型グロビン・フラボヘモグロビン
・はじめに
・短縮型グロビン
・フラボヘモグロビン
・今後の展望
2．一原子酸素添加酵素
(1)シトクロムP450概説-その発見、興隆と今後の展望-
・シトクロムP450の研究の歴史と多様性
・P450の命名法
・P450の構造
・P450の紫外可視吸収スペクトル
・P450が触媒する反応と還元系
・近年のP450研究の動向
・P450研究の展望
(2)生体内での一酸化窒素の産生：NO合成酵素の構造と機能を中心に
・生体内でのNOの産生
・NO合成酵素
・NOとセンサータンパク質との反応
・総括
3．二原子酸素添加酵素
・ヘム含有ニ原子酸素添加酵素
・二原子酸素添加酵素の発見
・免疫抑制への関わり-1998年以降-
・結晶構造-2006年・2007年-
・阻害剤の探索
・反応機構研究
・今後の展望
4．酸素添加・酸化酵素の反応機構と反応中間体の電子構造
・酸素添加酵素の反応機構-原子酸素添加酵素の反応機構と反応中間体
・Compound Ⅰを生成する他のヘム酵素
ペルオキシダーゼとカタラーゼの反応機構
・P450 のCompound Ⅰ
・Compound Ⅰの電子構造
・Compound Ⅰのモデル錯体と基質との反応機構
5．アルドキシム脱水酵素
・はじめに
・アルドキシム脱水酵素の構造と機能
・今後の展望
＜3＞情報変換・情報伝達に関与するヘムタンパク質
1．ヘム依存型ガスセンサータンパク質
(1)酸素センサータンパク質
・はじめに
・ヘム含有型酸素センサータンパク質の構造と機能
・おわりに
(2)COセンサータンパク質
・はじめに
・バクテリア由来のCOセンサータンパク質
・哺乳類に存在するCOセンサータンパク質
・おわりに
(3)可溶性グアニル酸シクラーゼとそのホモログタンパク質の構造と機能
・はじめに
・可溶性グアニル酸シクラーゼの構造と機能
・細菌由来のH-NOXの構造と機能
・おわりに
2．シグナル分子として機能するヘム
(1)原核生物のヘムセンサータンパク質
・はじめに
・バクテリアのヘム獲得機構で機能するヘムセンサータンパク質
・おわりに
(2)真核生物のヘムセンサータンパク質
・はじめに
・ヘム制御タンパク質の機能
・ヘム制御タンパク質におけるヘム結合様式
・代表的なヘム制御タンパク質
・おわりに
3．ニューログロビン
・脳内グロビンタンパク質ニューログロビン研究の歴史・背景
・Ngb研究の現状
・Ngb研究の将来展望
＜4＞ヘム輸送とヘム代謝
1．バクテリアのヘムトランスポーター
・病原性バクテリアによるヘムの獲得と輸送
・グラム陰性菌外膜のヘムの透過
・ペリプラズム層でのヘム結合タンパク質
・ヘムABCトランスポーター
・ヘムトランスポーターの分子メカニズム
・ヘムトランスポーターの研究の展望
2．ヘム分解酵素の多様な分子機構
・はじめに
・従来型ヘム分解酵素HO
・新たなヘム分解反応
・今後の展望
3．金属イオンの取り込みに関与するヘム含有酵素
・はじめに
・金属イオンの取り込み機構
・各種ヘム含有Fe3＋還元酵素の機能と構造
・おわりに
＜5＞測定解析技術
1．振動（共鳴ラマン・赤外・NRVS）分光
・はじめに
・共鳴ラマン分光法
・赤外分光法
・核共鳴非弾性散乱法（NRVS）
・今後の展望
2．反応ダイナミクスの時間分解測定
・はじめに
・時間分解分光の測定技術
・時間分解X線結晶構造解析の測定技術
・おわりに
3．磁気共鳴EPRでヘムタンパク質の何をみるか？
-活性中心の電子状態とミクロ分子環境-
・はじめに
・ヘムの電子状態
・酸化型ヘムタンパク質の磁化率とEPR測定
・還元型ヘムタンパク質の磁化率とEPR測定
・高酸化型ヘムタンパク質の磁化率とEPR測定
・短寿命反応中間体の捕捉とEPR 測定
4．磁気共鳴NMR
・はじめに
・常磁性シフト
・常磁性NMRを用いた研究例
・おわりに
5．反応速度論
・はじめに
・三成分系の速度論解析
・複雑な反応系の速度論解析
・今後の展望
6．ヘムタンパク質の電気化学
・はじめに
・タンパク質フィルム電気化学
・ヘム含有電子伝達タンパク質の電気化学
・ヘム含有酵素の電気化学
・今後の展開
7．計算化学によるヘムタンパク質の機能解析と予測
・はじめに
・ヘムに対する応用計算事例
・展望（理論計算とデータ科学の融合）
【第2編 展開研究】
＜1＞ヘムタンパク質と医学・薬学
1．ヘムタンパク質によるガス分子の受容による細胞機能制御と医学への展開：PGRMC1-CO系を例として
・はじめに
・COの生物作用の発見：NOと異なる役割
・メタボロミクス技術によるCOの標的分子の系統的探索：CBSの役割
・COによるタンパク質メチル化修飾の制御：解糖系酵素PFKFB3の役割
・脳微小循環の低酸素性拡張反応における
CO-CBS系と硫化水素（H2S）の役割
・新しいCO受容体、PGRMC1の構造機能相関とがんにおける役割
・おわりに
2．病原菌のヘム取り込みシステムと抗菌薬
・病原性微生物による宿主からのヘム鉄獲得
・グラム陰性菌のヘム鉄獲得機構：Has システム
・グラム陽性菌のヘム鉄獲得機構(1)：黄色ブドウ球菌Isdシステム
・グラム陽性菌のヘム鉄獲得機構(2)：化膿レンサ球菌siaシステム
・鉄取り込みシステムを標的とした抗菌剤開発
・各種モダリティ分子を用いた病原因子の機能阻害に基づく抗菌剤開発
・研究の将来展望
3．サイトグロビンと肝臓がん
・はじめに
・HSCにおけるCYGB発現の意義
・おわりに
4．転写因子Bach天然変性領域における多重ヘム結合の分子機構
・歴史・背景
・研究の現状
・将来・展望
5．P450と疾病、創薬
(1)ビタミンD代謝に関わるシトクロムP450
・はじめに
・ビタミンD25位水酸化酵素について
・ビタミンD1α位水酸化酵素CYP27B1について
・ビタミンD24位水酸化酵素CYP24A1について
・おわりに
(2)ステロイド代謝とP450：コルチゾール・アルドステロン合成の構造生物学
・ステロイドホルモンの合成
・CYP11B1とCYP11B2に関する機能と構造の研究経過
・CYP11B1変異体を用いた研究
・展望
(3)乳がんとアロマターゼ
・研究の歴史・背景
・研究の現状
・研究の将来展望
(4)アゾール系抗真菌薬の標的酵素としてのチトクロムP450
・研究の背景
・CYP51解析のスタート
・CYP51の特徴
・近年の解析から将来を見る
6．医薬品代謝
・研究の歴史・背景
・研究の現状
・研究の将来展望
7．呼吸鎖酵素に保存されたアロステリック部位を利用した抗菌剤の開発
・背景
・研究内容
・おわりに
8．寄生虫ミトコンドリアのヘムタンパク質：化学療法の標的として
・はじめに
・回虫成虫ミトコンドリアのNADH-フマル酸還元系
・マラリア原虫の呼吸鎖電子伝達系
・おわりに
＜2＞ヘムタンパク質と農学
1．P450と植物ホルモン
(1)アブシシン酸代謝不活性化酵素の阻害による乾燥耐性付与
・研究の歴史・背景
・研究の現状
・将来の研究展望
(2)チトクロームP450阻害剤によるブラシノステロイド・ストリゴラクトン生合成の制御
・はじめに
・ジベレリン
・ブラシノステロイド
・ストリゴラクトン
・サイトカイニン、ジャスモン酸
2．P450遺伝子を利用して新しい花色を作る
・はじめに
・フラボノイド
・ベタレイン
・カロテノイド
・まとめ
3．植物ヘモグロビンとその応用展開の可能性
・植物ヘモグロビンの研究の歴史
・植物ヘモグロビンのクラス分類と特徴
・Phytogbと共生窒素固定
・Phytogb1の機能と応用
＜3＞ヘムタンパク質と工学
1．デコイ分子を利用したP450 反応
・はじめに
・過酸化水素を基質酸化に使うヘム酵素
・デコイ（ Decoy）コンセプト
・デコイ（ Decoy）の存在証明
・P450BM3 とデコイ
・第二、第三世代デコイ
・合成触媒としてのP450の可能性
2．ヘムタンパク質のヘム置換による人工金属酵素の開発
・研究の歴史・背景
・研究の現状
・研究の将来展望
3．ヘムタンパク質の水溶性モデル錯体の構築と生体内利用
・ミオグロビンのバイオミメティック・ケミストリー
・水溶性ヘムタンパク質モデル錯体
・ヘムタンパク質モデル錯体の生体内利用
・将来展望
4．ヘモグロビンを用いた人工酸素運搬体（赤血球代替物）の開発
・はじめに
・ヘモグロビンの構造と酸素結合
・人工酸素運搬体の歴史
・Hbを用いた人工酸素運搬体の開発動向
・人工酸素運搬体の応用展開
■監修者■
城 宜嗣
兵庫県立大学 大学院理学研究科 教授
青野 重利
自然科学研究機構生命創成探究センター 教授
齋藤 正男
東北大学名誉教授
