SSK 株式会社 新社会システム総合研究所

フローマイクロ合成の最新動向

商品No.
R02V0961
出版月
2021年 8月
価格

印刷タイプ 72,600円 (税込)

ページ数
B5判 254ページ
発行<調査・編集>(株)シーエムシー出版
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レポート内容
■ポイント■
 ・フローマイクロ合成はファインケミカルや医薬品原薬の製造において導入が進む連続製造プロセスの基盤技術!
 ・フロー反応により反応効率の最大化、副生成物の最小化、コストダウンが期待され、グリーンなものづくりに貢献!
 ・本書ではプロセス開発や有用物質合成に向けた最近の展開について詳述するとともに、フロー実用化事例についても解説!

■概要■
 現代社会は、環境、気候変動、感染症、保健・衛生など、様々な地球規模の課題に直面しており、これらの課題への対応やSDGsの実現に向けて、有機合成化学の役割はますます増している。
 フロー・マイクロリアクターは微小流路の中で反応を行うフロー型の反応器であり、効率的な混合や速やかな加熱や除熱、精密な温度制御が可能である。その性質を利用して、収率・選択性の向上やマイクロフロー合成によってのみ実現可能なプロセスなど様々な新手法が見出されてきた。例えば、不安定な短寿命の活性種を発生させ、分解前に次の反応に利用するというフラッシュケミストリー(Flash Chemistry)はマイクロフロー合成によって実現した。一方、マイクロフロー合成やフロー連続プロセスは、安全性やスケールアップの容易さなどから産業界の注目を集めている。特に、ファインケミカルと医薬品原薬(API:Active Pharmaceutical Ingredient)の製造においては、安全性、品質管理、収率等において連続製造プロセス(continuous manufacturing)の導入が推奨されている。
フロー合成は、連続製造を実施するための鍵となる技術の一つである。また、フロー合成では、種々の方法による反応のモニターとデータ取得、さらには獲得したデータをもとにAI による反応最適化などが容易であることからも注目されている。
 我が国におけるフロー合成研究は、故吉田潤一先生のリーダーシップによって発展したといって良い。吉田先生は、Flash Chemistry を提案、実現しただけでなく、複数の化学反応を時間的・空間的に結合させて新しい効率的分子変換を行うという反応集積化の概念を提案して、フロー合成を時空間制御による反応集積化として定義するなど、この領域に多大な献をされた。本書を吉田先生に捧げると共に本書が日本の合成化学および化学・製薬産業等の発展に役立つことを願うものである。
-CONTENTS-
【第Ⅰ編:フラスコ合成化学からフロー合成化学への展開について】
<1>高速合成化学
1.はじめに
2.高速合成を可能にするフローマイクロリアクターの特長
3.高速混合による有機リチウム種を用いた高速反応の選択性制御
4.精密滞留時間制御による超短寿命有機リチウム種を活用した高速合成
5.おわりに

<2>フロー反応装置を活用した高効率光反応
1.はじめに
2.光フローリアクターと光源
3.光[2+2]付加環化反応
4.光Barton反応
5.光ハロゲン化反応
6.一電子移動を鍵とするラジカル環化反応
7.光レドックス触媒による還元的ラジカル付加反応
8.PCBMのワンフロー合成
9.ラジカルブロモアリル化反応
10.おわりに

<3>気液フロー反応の動向と新たな利用法
1.はじめに
2.気液二相流
3.フローマイクロリアクターを利用した気液二相反応の最近の実例
4.おわりに

<4>不均一系キラル超分子金属クラスター触媒の開発と連続フロー系への展開
1.はじめに
2.明確にその構造が定義された空孔を触媒活性部位に持つ、Raymond正四面体型超分子金属クラスター
3.Raymond正四面体型超分子金属クラスターの高分子への担持による不均一系触媒化
4.不均一系Raymond正四面体型超分子金属クラスター触媒を用いるAza-Prins反応
5.不均一系Raymond正四面体型超分子金属クラスター触媒を用いるAza-Cope反応
6.連続フロー系における不均一系Raymond正四面体型超分子金属クラスター触媒の活性のオンオフ挙動
7.担体のアンモニウムカチオン構造の不斉Aza-Cope反応における影響
8.不均一系Raymond正四面体型超分子金属クラスター触媒の構造解析
9.結び

<5>有機電解反応の現状とフロー技術の利用
1.はじめに
2.有機電解合成反応の現状
3.マイクロリアクターを利用する有機電解プロセス
4.おわりに

<6>高分子合成反応
1.はじめに
2.フローマイクロリアクターによる重合反応制御の概要
3.フローマイクロリアクターによる付加重合反応の制御
4.おわりに

【第Ⅱ編:フロープロセス開発の展開について】
<7>フロープロセスにおける酸化反応-大規模化学プロセスからみえるもの
1.はじめに
2.酸化反応をどう整理するか
3.酸化反応の利用拡大に向けて=フロー反応システムをどう活かすか
4.結び - 知行合一 -

<8>不均一系触媒を使用したフロー式接触還元反応の進展
1.はじめに
2.フロー式接触還元反応装置
3.不均一系触媒で進行するフロー式接触還元反応
4.官能基選択的接触還元反応
5.芳香族化合物のフロー式核水素化反応
6.終わりに

<9>加水分解酵素反応プロセス
1.はじめに
2.リパーゼ触媒による速度論的光学分割と動的速度論的光学分割
3.リパーゼ触媒連続フロー合成によるエステル化並びに速度論的光学分割
4.リパーゼ触媒連続フロー合成による動的速度論的光学分割
5.終わりに

<10>ファインケミカル合成プロセス
1.はじめに
2.ファインケミカル合成のためのフローシステム
3.Boscalid(R)(農薬)の直列型フロー連続合成
4.Oxomaritidine(天然物)の収束型フロー連続合成
5.Dolutegravir(医薬品)の直線型フロー合成
6.(R)および(S)-Rolipram(医薬品候補)の直線型フロー合成
7.おわりに

【第Ⅲ編:有用物質合成への展開について】
<11>糖鎖合成
1.迅速な加熱による反応制御
2.効率的な混合による收率改善:Kdo-グリコシル化
3.効率的な除熱効果を利用した立体選択的グリコシル化反応
4.マイクロフロー法を利用した連続的グリコシル化:ジアセチルストラテジーによるα-gal糖鎖のワンフロー合成

<12>ペプチド合成
1.ペプチド合成とマイクロフロー合成
2.鎖状α-ペプチドのマイクロフロー合成
3.環状ペプチドのマイクロフロー合成

<13>フッ素化
1.フッ素ガスによる直接的フッ素化
2.求核的フッ素化
3.求電子的フッ素化とラジカル的フッ素化
4.おわりに

<14>トリフルオロメチル化合物
1.フロートリフルオロメチル化反応
2.フローペンタフルオロエチル化反応

<15>フロー合成法の天然物合成への応用
1.はじめに
2.ヒストン脱アセチル化酵素阻害活性を持つ環状ペプチド天然物
3.光学活性ヒドロキシカルボン酸のフロー合成
4.おわりに

<16>フロー化学の医薬品合成への応用の試み─タミフルのワンフロー合成と有機触媒の固定化─
1.フロー合成と有機分子触媒
2.Diphenylprolinol silyl ether触媒について
3.オセルタミビルのワンポット短時間全合成とワンフロー合成
4.Diphenylprolinol silyl etherの固相への担持
5.まとめ

<17>フローマイクロリアクターによるα-アルキリデンβ-オキソイミドの直截的合成
1.はじめに
2.α-アルキリデンβ-オキソイミドとその不斉触媒反応、合成方法
3.フローマイクロリアクターを活用するα-アルキリデンβ-オキソイミドの直截的合成の可能性
4.フローマイクロリアクターによるハロゲン-リチウム交換反応とメチル化
5.フローマイクロリアクターによるハロゲン-リチウム交換反応と続くイソシアネートとの反応
6.フローマイクロリアクターによるα-アルキリデンβ-オキソイミドの合成
7.おわりに

<18>フロー法を用いたフラーレン誘導体の合成
1.はじめに
2.PCBMの合成法について
3.PCBMのフロー合成法
4.インデン付加体のフロー合成
5.おわりに

<19>ナノ粒子合成
1.はじめに
2.フローマイクロリアクターによるナノ粒子合成条件制御の特徴
3.フローマイクロリアクターを用いたスクリーニングシステム
4.おわりに

【第Ⅳ編:プロセス強化、実用化への展開について】
<20>プロセスインフォマティクス:プロセス強化のためのAI活用
1.はじめに
2.インフォマティクスが牽引する化学研究
3.グリーンものづくりにむけて
4.定常状態フロー反応条件最適化法:9+4+1法
5.擬定常状態フロー反応条件最適化法:グラジエント法
6.おわりに

<21>医薬品製造のためのフロー実用化展開
1.はじめに
2.ホスゲンを用いる反応のフロー化
3.クロロフォーメート化反応
4.クロロカルバモイル化反応
5.設備導入および稼働
6.おわりに

<22>ファインケミカルにおけるフロー合成法の実用化
1.化学企業として期待するフロー反応のメリット
2.当社のフロー反応への関わり
3.n-BuLiを使ったフロー合成法
4.生産スケールでのフロー反応

■監修■
深瀬 浩一
大阪大学
永木 愛一郎
京都大学
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