■ポイント■
・コロナ禍により抗菌だけではなく抗ウイルスへの期待が高まる時代に必携の一冊!
・本書冒頭では、新型コロナウイルス感染症に関する情報や対策について分かりやすく解説!
・銅や銀などの無機系、光触媒系の開発動向、続いて繊維、表面処理、住宅材料への応用事例、そして性能評価と安全性能・耐久性評価・認証までを網羅し、抗菌・抗ウイルス剤/製品の最新動向を一挙紹介!
■概要■
抗菌製品が世に認められてから25 年以上経ち、昔のような「何にでも抗菌」「ついでに抗菌」という風潮はなくなり、抗菌は必要な場所には「当たり前」の時代がやってきた感があった。しかし、2020 年初頭から始まったコロナにより、時代は一変した。手洗い励行から始まった生活習慣の変化で、細菌対策だけでなくウイルス対策が余儀なくされている。ここで、製品の開発技術者ある我々は、昔の悪夢を思い出しそれを繰り返さないよう努力しなければならない。
思い起こせば20 年ほど前、抗菌製品が世に出た頃、抗菌処理する必要もないと思われる製品、抗菌剤が適切に入っていない製品(性能が出ていない製品)、抗菌剤すら入れていない抗菌製品が市場に出回ることで、「抗菌」に対する消費者の信頼を失いかけた時代があった。政府の支援もあったことから、抗菌JIS により、抗菌性能評価方法とその適切な運用が確保された。また自主団体が消費者団体の協力の下、日本の抗菌製品生産業界・流通団体がその運用を推進したことにより、抗菌が「KOHKIN」として世界に羽ばたくこができたことは、皆様のご協力の賜物と感謝する次第である。時代は抗菌から抗ウイルスに幅を広げようとしている。
本書も、抗菌から抗ウイルスに軸足を拡げ、内容を大きく変更した。各執筆者においてもコロナ禍の中、本来の業務多忙の中を短期間で「抗ウイルス」に関する情報を多く含めまとめ上げていただいた。
まず最初の章ではコロナ感染症に対する情報をまとめていただき、続く<2>〜<4>では基礎的な情報を最前線の研究者の先生方より提供いただいた。以降、無機系(<5>)、光触媒系(<6>)の抗菌・抗ウイルス剤の最新情報をまとめた。抗菌・抗ウイルス成分を用いた製品として繊維への応用(<7>)、表面処理への応用(<8>)、住宅材料への展開(<9>)として最前線の技術者の方より情報を提供いただいた。これら製品の最も重要な抗菌・抗ウイルス性能評価
(<10>)、安全性能・耐久性評価(11章)に関する従来の抗菌から枠をウイルスにまで広げた情報を提供いただいている。
消費者から抗ウイルスの期待が高まる昨今、業界によってはその基準が未整備なところもあるかも知れないが、本書がその道標的存在として、技術者と消費者の期待を担っていけることを願う次第である。
<1>抗菌・抗ウイルス製品に求められるもの
1.ウイルス感染症に対応する抗ウイルス製品について
・人類の歴史は、細菌やウイルスなどの病原体による感染症との戦いの歴史である
・抗ウイルス薬の概観
・科学技術の光と影
2.都市災害としてのCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)と抗ウイルス剤
・わが国におけるCOVID-19と季節性インフルエンザ
・世界のCOVID-19発生状況
・COVID-19の医療
3.ウイルスの分類・構造・増殖の仕組み
・ウイルスの分類
・ウイルスの構造
・ウイルスの増殖の仕組み
4.身の回りの感染経路を考える
・感染症制御のための3大原則
・感染経路
・感染経路対策
5.医療現場からみた日常生活での感染予防と抗菌・抗ウイルス
・マスクの真価:細胞レベルでのSARS-COV2感染部位
・手:汚染物媒介感染
・手洗い:目的に合致した正しい動作という意味での作法 など
<2>抗菌・抗ウイルス剤/製品の最新動向
1.無機系抗菌材料の開発動向
・無機系抗菌材の開発動向
・材料に対する好適抗菌試験
・無機系抗菌材料
<3>抗菌・抗ウイルス剤の選び方・使い方
1.抗菌・抗ウイルス剤の選び方
・抗菌・抗ウイルス剤の種類
・抗菌・抗ウイルス剤に求められる特性
・薬剤添加以外の抗菌・抗ウイルス技術
2.抗菌・抗ウイルス剤の使い方
・樹脂混練技術への応用
・塗装技術への応用
<4>抗菌・抗ウイルス剤最新情報
1.抗菌分野で用いられるナノ材料
・銀・銅(Ag、 Cu)系
・酸化チタン(TiO2)系
・酸化亜鉛(ZnO)系 など
2.固定化抗菌・抗ウイルス剤Etakの特性とその抗菌・抗ウイルス効果
・固定化抗菌剤Etakとその抗菌効果について
・Etakの安全性
・Etakの化粧品としての応用
3.クマゼミの翅を模倣した抗菌材料の開発
・昆虫の翅にあるナノ構造と抗菌特性
・ナノ構造の作製法とナノ構造表面の濡れ性制御
・マクロな抗菌評価 など
4.金属の抗菌特性をいかした微生物制御
・微生物腐食の誘導因子となる微生物の付着/局在
・抗菌性金属が示す微生物の付着忌避の作用
・抗菌剤としての金属の特性 など
<5>銅や銀を用いた抗菌・抗ウイルス剤
1.銅の抗菌作用と抗菌材料・製品の性能基準
・銅の抗菌作用について
・銅及び銅合金の抗菌材料・製品の性能基準
2.高分子/銀ナノ粒子複合抗菌・抗ウイルス材の均一固定化技術
・抗菌・抗ウイルス性材料としての銀ナノ粒子の特性
・高分子への固定化と、抗菌・抗ウイルス活性の発現
・固定化による抗菌活性の抑制
3.金属酸化物の抗菌・抗ウイルス活性とその評価
・銅化合物や銀化合物の抗ウイルス活性について
・銅化合物・銀化合物以外の金属酸化物の抗ウイルス活性について
4.一価銅化合物を用いた「Cufitec(R)」の開発と用途展開
・抗ウイルス加工“Cufitec(R)(キュフィテック)”の不活性化効果
・一価の銅化合物の不織布製品への応用
・一価銅化合物を分散した塗料・インキへの応用 など
5.無機系抗菌・抗ウイルス加工剤「ノバロン(R)」、「ノバロン(R)IV」
・無機系抗菌剤「ノバロン」、無機系抗ウイルス加工剤「ノバロンIV」
・銀系無機抗菌剤「ノバロンAG」シリーズ
・「ノバロンVZ」シリーズ など
6.無機系ガラス抗菌剤「イオンピュア」
・社会環境の変化(コロナ禍における抗菌剤のニーズ動向)
・抗菌剤の種類と「イオンピュア」の特徴
<6>光触媒系抗菌・抗ウイルス剤
1.可視光型光触媒による抗菌・抗ウイルス
・室内環境で抗菌・抗ウイルスを発揮する光触媒材料の設計指針
・CuxO/TiO2の抗菌・抗ウイルス特性
・総括
2.蛍光灯レベルでも有効な光触媒の開発-複合化による光触媒の応用範囲の拡大の可能性-
・光触媒の高機能化の試みとしてのアパタイトとの複合化
・アパタイトで光触媒を被覆する
・アパタイトを被覆した酸化チタンの特徴
3.光触媒酸化チタンの添加によるレーヨン繊維の高機能化
・光触媒酸化チタン-シリカ複合体を添加したレーヨン繊維の機能性と力学物性
・酵素処理による光触媒酸化チタン添加レーヨン繊維の機能性の向上
・染色した光触媒酸化チタン添加レーヨン繊維の
退色性と機能性への影響 など
4.光触媒コーティングによる室内の照明下でのウイルス不活性化
・検証背景
・総括
5.抗菌・抗ウイルスにおける光触媒の優位性及びフジコーが考えるより安全・安心な感染対策
・現状の主な新型コロナウイルス感染対策
・抗菌・抗ウイルスにおける光触媒の優位性
・フジコーの主な衛生製品とその特長 など
<7>繊維への応用
1.SARS-CoV-2とナノファイバー
・SARS-CoV-2の耐熱性
・繊維表面でのSARS-CoV-2の生存時間
・ナノファイバーによるSARS-CoV-2の不活化 など
2.銀ナノ粒子担持繊維の抗菌性能と抗ウイルス性能
・金属銀ナノ粒子分散コロイドの抗微生物性能
・繊維への金属銀ナノ粒子固定化技術の紹介
・金属銀ナノ粒子担持繊維の抗菌性能評価 など
3.抗菌・抗ウイルス機能を持ったバイオミメティックプロテクション繊維
・バイオミメティクス(生体模倣)
・抗菌・抗ウイルスにおけるバイオミメティクス
・安全な抗菌・抗ウイルス繊維 など
4.においに対する人体の生理反応と消臭抗菌性繊維を用いた不快臭対策法
・介護現場の不快臭の原因となる臭気物質
・においに対する人体の生理反応
・体臭を除去するための消臭抗菌性繊維 など
5.繊維加工用抗ウイルス剤「ニッカノン」
・日華化学の抗菌、抗ウイルス剤
・抗ウイルス性試験について
・繊維加工における推奨処方について など
<8>表面処理への応用
1.抗菌・抗ウイルス性を有する水性塗料の開発
・水性塗料の臭気低減
・その他の特徴
・抗菌・抗ウイルス性を有する塗料の開発
2.抗ウイルスコート剤「ウィルヘルコート」の開発と応用展開
・背景
・抗ウイルス化粧板(ウィルヘル)の開発
・抗ウイルスコート剤(ウィルヘルコート)の開発 など
3.抗ウイルス加工剤「ウィルテイカー」の開発
・抗ウイルス加工剤「ウィルテイカー」の特徴
・繊維製品への応用
・建材への応用 など
4.高機能抗菌めっき技術「KENIFINETM(ケニファイン)」とその展開
・ケニファインの概要
・ケニファインの適用例
5.渋柿に倣う抗菌コーティング材料の開発と展開
・タンニンの化学構造と機能
・部分疎水化タンニン酸
6.微粒子投射処理による抗菌・抗ウイルス表面の形成
・微粒子投射処理
・微粒子投射処理表面
・微粒子投射処理面の抗菌性能 など
<9>住宅材料への展開
1.住宅材料の抗菌技術とウイルス共生社会への課題
・家庭における節水と防汚・抗菌技術
・抗菌について
・トイレの防汚・抗菌技術 など
2.住環境への適用に向けた抗菌材料技術
・サメ体表の微細構造に着目した表面構造設計
・抗菌材料への適用
3.生活空間への抗菌・抗ウイルス技術
-「帯電微粒子水」生成技術による細菌・真菌・ウイルスの抑制効果について-
・代表的な空気浄化技術
・「帯電微粒子水」とは
・「帯電微粒子水」にできる事 など
<10>抗菌・抗ウイルス性能評価
1.繊維製品の抗ウイルス性能評価方法
・抗ウイルス性試験
・JIS L 1922
・SEKマーク繊維製品認証
・今後の展開について
2.抗ウイルス剤の性能評価、評価方法
・評価試験に用いるウイルスの種類
・ウイルスを取り扱うための施設について
・各種試験規格と試験方法の概要 など
3.プラスチック製品の抗ウイルス性能評価方法
・抗ウイルス性試験
・ISO21702
・SIAA抗ウイルス加工マーク運用 など
4.光触媒素材の抗ウイルス試験法と性能評価
・光触媒素材の抗ウイルス性能評価試験方法
・インフルエンザウイルス、ネコカリシウイルスを用いた抗ウイルス性能評価
・新型コロナウイルスを用いた抗ウイルス性能評価 など
<11>安全性能・耐久性評価・認証
1.抗菌剤・抗菌加工製品の安全性評価
・化学物質・化学製品による健康被害に対する安全対策
・化学物質・化学製品の安全性評価のための取り組み
・抗菌剤・抗菌加工製品、バイオサイドによる健康被害事例のトピックス など
2.抗菌・抗ウイルス加工製品の認証と規制
・抗菌製品技術協議会(SIAA)の認証制度
・抗菌・抗ウイルス加工製品の表示等に関する国内外の規制
3.光触媒抗菌・抗ウイルス製品の安全性・耐久性と評価方法の最近の動向
・光触媒抗菌・抗ウイルス製品の試験方法標準化と製品認証制度
・光触媒抗菌・抗ウイルス製品の性能判定基準
・光触媒抗菌・抗ウイルス製品の安全性 など
■監修■
冨岡敏一 関西大学